相合い傘

 昨夜、BSで放送された「男はつらいよ・寅次郎相合い傘」を観て、4回泣いてしまった。この作品は本当に心が洗われる。
 まずマドンナのリリー(浅丘ルリ子)がいい。気丈で苦労人で優しくてかわいくて、寅次郎にぴったりなんだが巧くはいかない。
 今回は脇エピソードの主人公であるパパ(船越英二)も存在感があった。人生に疑問を感じふらりと蒸発するサラリーマンの役まわりなのだが、この役は当時も今後も我々会社の歯車サラリーマンには支持されるんでしょうね。パパが、青函連絡船の上で飛ぶカモメを見て「鳥はいいですねぇ・・・」とつぶやくシーンには思わず肯いてしまった。
 このパパと寅次郎、そしてリリーが偶然北の大地で出会い、3人の愉快だが少し物悲しい旅が始まる。この展開は2年後に山田監督によって創られる名作『幸福の黄色いハンカチ』を見事になぞっている。まさにこの作品が原型となっていると言っていい。
 またエリートサラリーマンがひょんなことから寅次郎やリリーのいわゆる底辺の生活を体験するというところなどは『ローマの休日』を彷彿とさせる。
これ以外にも随所に見所がある木目の細かい名作となっている。観終わると優しくなれる作品なんてなかなかあるもんではないですぞ。

 そうそう、ワシャの友人が重松清を推薦していたが、今日の新聞に『その日のまえに』(文藝春秋)の広告が出ていた。読者の感動の声欄に「本書を読んだあと、夫がとても優しくなりました。」とあったので、久々に重松を読んでみようかなと思った。