ケッコウ毛だらけ

男はつらいよ 寅次郎子守唄」を観た。基本的にこのシリーズには夏編と秋編があって本編は秋のほうである。秋編のほうが風景がいい。風に揺らぐススキに哀愁を帯びたBGMが物悲しい。
 マドンナは十朱幸代、若い、そりゃそうだ、30年前だもの。でもさぁこの間観た「祇園囃子」http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=427365&log=20050925
の十朱幸代の方が30年の歳を重ねているにも関らずきれいだったなぁ、化粧方法が進化したせいなのだろうか。
 それにしても寅次郎はいつも優しいねぇ。九州唐津の海沿いの町で渡し舟を待っている寅次郎と通りかかったストリップ小屋の踊り子(春川ますみ)との会話である。
踊り子「こんなにいい天気なのにさ、暗い所で女の裸なんか見て何がいいのかねぇ」
寅次郎「別に裸を見るんじゃねえ、姐さんの芸を見に来てるんだと思や腹も立たねえだろう」
 この一言で踊り子の表情がふっと和らぐ。こんな科白、なかなか言えませんぜ。
 すでに「男はつらいよシリーズ」は日本映画の名作入りを果たしている。とくに第40作あたりまでが昭和の臭いがあり、且つ寅次郎もまだ活発で元気があった。
 この作品、1974年の公開なんですね。ワシャがまだ高校生のころだよ。
 だから映画の風景をじーっと見ていると、「ああ、あの山の向こうには、おれの恥ずかしき青春時代があったんだなぁ」としみじみと思えてくる。考えてみればあのころは随分と自由だった。まだまだ人生の先は見えず、時間は無尽蔵にあると信じていた。恐いものがなかったから嫌なものは嫌と断言できた。そんなバカな自分への郷愁もあって、寅さんは面白いのである。
 今度の土曜日(10月22日)午後9時には、最強のマドンナリリー(浅丘ルリ子)の再登場だ。48作の中でも上位にランクされる名作と言っていい。この作品で浅丘はキネマ旬報主演女優賞を獲得している。
 それでは劇中でのリリーの名科白を一つだけ・・・
「幸せにしてやる?大きなお世話だ。女が幸せになるには、男の力を借りなきゃいけないとでも思ってんのかい。笑わせないでよ」
 いい啖呵だねぇ。
 お勧めの一本です。是非、ご覧あれ。