選挙点描2

 ワシャが投票所を眺めていると面白いことが起きよった。30歳前後の口髭をたくわえたいかにも軽薄そうな男が小学校3〜4年生の子どもを連れてやって来おった。見てくれはいい加減だが、選挙に来るとはなかなか見上げた若者じゃ、子どもに投票をするきちんとしたお父さんの姿を見せるのも大事な勉強だ。善哉善哉。
 男は受付を済ませて、小選挙区の投票を済ませた。次に比例と国民審査の投票用紙を受け取った。おや、何か子どもがせがんでおるぞ。なんじゃ?あら、お父さん、比例の用紙を子どもに渡しおった。どうするつもりじゃ。ありゃま!記載代で子どもが何やら書いておる。何をするんじゃ、未成年者には投票権はないんだぞー。
 案の定、選挙管理委員会の人が男に低姿勢で何やら注意をしている。男は子どもの持っている投票用紙を取り上げると、自分で記載台に向かった。これで一件落着か、と思いきや、この男とことん楽しませてくれるわい。このバカ、投票缶の前を比例と国民審査の票を持ったまま通過してしまった。そのまま出てこようとするから、受付の人に何か言われている。そうしたらこの男、その票をくしゃくしゃと丸めると受付の人に投げつけたのだった。息子と思しき少年は終始その様子を眺めている。そんなことで子どもにいいしつけなんてできないよ。その男、仏頂面を下げて投票所から出てきおったわい。かわいそうなのはその息子、「わけがわからないけどお父ちゃんが知らないおじさんに叱られてしまった。なんだか原因は僕にありそうだ。どうしたらいいんだろう」
 そんなことを思ってか、少年は怪訝そうな顔でバカの顔を覗っている。子供に心配懸けてんじゃねえよ。