地獄の文章講座in東京(3)

 会場は「カルチャーセンター目白」の地下の会議室である。ここへは目白通りの歩道からダイレクトに階段で降りることができる。その降り口で二人の若者とかち合った。始めて見る顔だから初参加の人だろう。若者は「どうぞ」とワシャに道を譲ってくれた。いい若者だなぁ。
 階段を途中まで降りると、会議室のウインドー越しに日垣さんの背中が見えた。
「こんにちは」と声を掛けて会議室に入る。日垣さんは入口の右手でライターの藤井さんと打ち合わせをしている。ワシャのことなんか気がつかない。
 入口左手に受付がある。おっと若い女性が対応しているではないか。
 ワシャは「ピーン」ときたね。会費を払って名札を受け取るときに、その女性に「日垣さん?」と声を掛けると、「はい」と返事をするではないか。な、なんと日垣さんのお嬢さんだった。(ばんざーい)
 こんなこともあろうかとワシャは重い荷物のなかに愛知博の「モリゾーキッコロ携帯ストラップ」をしのばせていたのだ。それをおもむろに出すと「愛知博のお土産です」と言って渡す。ダッハッハッハ(高笑い)
 お嬢さん、日垣さん似の細面で、なかなかの美人ですぞ。やや眦(まなじり)が上がったぱっちりとした目が印象的だ。
 さてと、お嬢さんには好印象を残したことだし、席を探そうと会場に目を移す。すでに6割以上の席が埋まっていた。常連組の大阪のDさんや千葉のU先生もいる。もう後ろの方しか空いていない。仕方がないので大きなキャスターバッグをゴロゴロと引きずりながら会議室の奥へ向かった。それに目ざとい日垣さんが気づいた。
「ワシャさん、海外旅行へでも行くの?」
 それに藤井さんが畳み掛ける。
「オークションで大量に競り落としたものを詰めて帰るんだよね」
(※セミナーの途中で、会議費を浮かせるために参加者が持ち寄ったものでオークションをすることになっています)
 声を掛けられてしまったので、ワシャは降りかえって、あらためてご挨拶をして席につくのだった。
 セミナー開始まで、残り7分・・・(続く)