今日の出来事

 昭和21年というから随分と昔のことになる。夕刊フクニチサザエさんの連載が59年前の今日から開始された。
 始まった頃、ふねさんはパーマを当てていたようで、今、テレビで見るふねさんよりいくらか若作りだ。サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんのヘアスタイルはそのままで、59年間、まったく変化していない。
 それにしても59年も経っているのでテレビの磯野家は不思議な家庭になってしまった。まずお母さんが家で和服を着ている一般家庭というのは珍しかろう。小学生が2人もいるにもかかわらずテレビゲームがない家も貴重だ。ボーズ頭の男の子はいるかもしれないが、えりあしを刈り上げた女の子はついぞ見かけたことがない。お父さんが休日になると和服に着替えて近所の人と碁を打っている。これはあるかもしれない。
 40年程前、ワシャ(私のこと)に物心がついた頃には、朝日新聞の社会面にサザエさん四コマ漫画が掲載されていた。漫画というものが今ほど氾濫しておらず、また今ほど市民権を得ていなかったから、漫画に対して嫌悪感を示す親の元で、ワシャはせっせとサザエさんを切り取っては、スクラップ帳に張るくらいが唯一の漫画に接する機会だった。あの頃はカツオくんの方がお兄ちゃんだった。カツオくんを年齢で抜いたかと思ったら、あっというまにサザエさんを追い越して、いつのまにかマスオさんをも上回ってしまった。そのうちに子どもができて、イクラちゃんかと思ったら、タラちゃんになって、ワカメちゃんを超して、カツオよりも大きくなってしまった。サザエさんの年齢を知らないが、長男はすでに彼女すら追い越そうとしている。おいおい、ワシャ波平さんか・・・
 前々から「サザエさん」という漫画(アニメ)はけっこう残酷な漫画だと思っていた。だってさ、サザエさん一家は一向に年をとる様子がない。波平さんの頭の毛の数も変わらないのだ。つまりサザエさん一家は、過去から未来へと流れる時間系の中にいる我々に対して絶対静止座標となっているのである。彼らの元気さや笑顔を見せ付けられて、己の加齢を思い知らされるのはワシャだけだろうか。
 いずれ波平さんを抜いて、裏のご隠居さんも抜くんだろうなぁ、そしてやがてはお彼岸のシーンに必ず出てくるご先祖様になっちゃうんだろうね。その時になってもカツオくんはボーズ頭のまま走りまわっていることだろう。
 人生は無常だ。