技術と心

「物を創るには技術と心、二つのものが必要だと思うのだが、人の心を搏つ為には、技術を心が超えていなければならないと、常々僕は考えている。技術を磨くのは勿論のことだが、技術が少しでも高まればそれを超える心を磨かなければならない」
 倉本聰氏が、久々の長編シナリオ「優しい時間」のあとがきに記した言葉である。
 昨日、大阪府立体育館に無数の座布団が舞った。連勝街道まっしぐらの無敵横綱朝青龍に土がついたからである。番狂わせがあるとファンは喜ぶ。しかし、この座布団の飛び方は異様だった。そして朝青龍は支度部屋の風呂場で「チクショー!」と怒声を張り上げたという。
 このガキのような横綱は、技量的には大鵬千代の富士に匹敵するほどのものを持ちあわせていながら、如何せん心のほうが桁外れに不出来なのである。そのことを多くの相撲ファンは見透かしている。心を置き去りにして技術ばかりを肥大化させてきたガキを、ファンは座布団で叱っているのだ。
 もう一人、ホリエモンもそうである。フジテレビがどうの、ライブドアがどうのという以前の問題で、資産ばかり肥大化し(ウラヤマシー)、心のほうがお留守になっていることを世間は敏感に嗅ぎ取っている。
 だから心有る倉本聰市川森一(脚本家)、加藤諦三タモリ中島みゆきなどに「乗っ取られるなら番組を降板する」とそっぽを向かれるのだ。金では心を育むことなどできない、ということが解からないところにホリエモンの哀しさがある。
 さて、今週の木曜日にドラマ「優しい時間」が終了した。久々に心を洗ういい作品に出会えたと思う。見逃された方は再放送で見られることをお薦めする。優しくなれること請け合いだ。
 ただね、主題歌だけはいただけない。平原綾香が歌っているのだが、ひどい息継ぎで聴いていると呼吸困難に陥ってくる。もっと歌の練習をしろよ。ヘタクソ。

追伸:昨日、開幕をした愛知万博にも心がない。「ハードさえ造ればいいでしょ」という協会の意識が人混みや行列をつくる結果になってしまった。弁当禁止の問題だって協会が来場者ではなく出展業者の方しか見ていない結果ではないか。心を置き去りにしたイベントはどこか寒々としている。とくに昨日は本当に寒々としていた。(ブルルル〜)