ゴルゴに学べ

 私は小心者なので普段から気をつけていることがある。例えば書店などで、本を物色している際に、背後に人が立つことがありますよね。そうした場合、少し場所を移動するか立ち位置を変えて、背後の不審者を必ず自分の視野に入れておくということを習慣としております。
「お前、ゴルゴ13の読みすぎじゃないの?」と言われるかもしれませんが、まさにそのとおりなのです。子どもの頃に読んだゴルゴ13の「俺の背後には立つな」というあれに感動し、一生懸命、真似をしているうちに身についちゃいました。ただ背後に立たれたからといって殴ったりはしませんけどね。また知人に立たれても反応をしないので、知人に背後から襲われればあっけなくやられてしまうでしょう。
 大阪の寝屋川でまた「き印ガキ」が小学校に侵入し教職員を襲って1人を殺害し、2人を負傷させた。この「き印ガキ」事件前に学校近くの飲食店でそわそわしながら煙草を3本立て続けに吸っていたという。高ぶる緊張を押えていたのである。ということは心神喪失でもなんでもない。精神的に病んでいれば端から落ち着かせる精神がぶっ飛んでいるからその必要がないのだ。この「き印ガキ」には責任能力がある。私は便宜上「き印ガキ」と呼んでいるが、精神鑑定の必要すらない。
 さて、この事件で先生が背後から刺されてお亡くなりになられた。ご冥福をお祈りする。しかしこの優しい先生はゴルゴ13を読んでいなかったらしい。平日の午後に挙動不審な若者がやってきたのである。まずこの事実だけでも警戒すべきである。
 そして飲食店であれほど緊張していたのだ。少し観察して「おかしさ」に気づかなければいけない。それに前を歩いて案内するのはいいが、その時は斜めに体勢をとり、少年の全身を視野にいれる格好で半歩ほど先行するかたちをとる。そして必ず少年の横で少年が左手にカバンを持っていれば左側に立ち、右手に持っていれば右側に立つ。これで少年がカバンの中から突然刃物を出して襲ってきても刃物を持った利き腕との距離があるので致命傷だけは避けられるのである。
 世知辛いことだが、知らない人間、怪しい人間に対峙するときには危機センサーをしっかりと立てて、注意をしなければいけない。
「おじさんはどうしてそんなに強いの?」という子どもの質問に、ゴルゴ13はこう答えている。
「強くなんかない。ただうさぎのように臆病なだけだ」と。
 大阪では池田小学校の例もある。貴い命を守るために過去の危機に学んで、みんな少しだけ人が悪くなろう。悲しいことではあるが・・・