天に唾す

 久々に富士山を見た。12月も後半というのに赤茶けた姿を晒していた。冠雪がないのである。素っ裸の富士山は異常な気象に警告を発している。

 昨日の新聞で産経と朝日が鯨ネタを扱っている。産経は社会面で小型のミンククジラが増加して大型のシロナガスクジラの生態を圧迫していると報告している。繁殖力のあるミンクが餌のオキアミを食べ尽くしているので、シロナガスクジラを守るためにも間引きが必要だ、と結んでいる。朝日は天声人語である。北太平洋を未知の声を発しながら老クジラが12年間も遊泳しているという英国科学雑誌に掲載された話で書き始め、オーストラリアとミュージーランドの海岸に100頭以上のクジラが打ち上げられて死んだことを取り上げて、地元では「彼らの魂は私たちと同じです」と誰が言ったかは知らぬが、クジラの死骸をわざわざ海に向けて埋葬をした、と結んでいる。
 見事に180度違った見解である。産経説を採れば、クジラは増殖しているので多くなりすぎて浜に打ち上げられたとも解せる。朝日説なら、クジラは人間と同じで利口な動物だから、浜に打ち上げられた仲間を救い出そうとして次々と陸上に上がってきたということになる。まぁどっちでもいいけど、浜のクジラの死骸は単なるゴミでしかないわけで(生きているなら海に戻せばいいけれど)、その埋葬というのはたいへんな環境破壊になるのではないか。だったら食ってしまったほうが世のため人のためになるんじゃないだろうか。「この100頭でどれだけの飢えた子どもが助かるのだろう・・・」と考えるのは不謹慎だろうか。

 蛇足だけれども平成17年度の予算財務省原案が出た。どうみても一般庶民に負担をおっかぶせて逃げ切ろうという官僚主導、族議員大喜び型クソ予算でしかない。和田秀樹が「〈疑う力〉の習慣術」の中で言っている。
「前例踏襲主義は官僚たちにとっては当然のことだ。官僚は政府与党が決めたことを確実に具現化するのが仕事だからだ。官僚が自分で問題を発見して勝手に政策を進めてしまっては、まさに官僚独裁である」
 そのとおりだ。ではクソ予算を作ったのは誰か?
「問題なのは、官僚たちに対して『よい問題』を与えない政治家の側にある」
 まさにそのとおり。庶民が酷税にあえぐのも失業の危機に苦しむのも与党政治家のバカさ加減に端を発している。元を糺せばそんな与党に政権担当をさせている選挙民がアホということなんだね。