河井継之助命日

 司馬遼太郎の作品に「峠」という名作がある。幕末期に河井継之助という奇人が越後長岡藩7万4千石に登場し、小藩ながら官軍に対して猛然と反抗し、一矢を報いるが結果として全滅にいたるまでの経緯を綴った長編である。 司馬はこの作品で「侍とはなにか」ということを考えてみたかったと言っている。
 渡辺謙アカデミー賞にノミネートされて話題になった「ラストサムライ」という映画があった。時代考証や歴史というものからは大きく逸脱してはいるが、「サムライとは何か」というテーマはきっちりと描かれていた。
 どちらの作品も主人公はラストで死ぬ。己の人生を完成させるために戦死するのである。
「幕末期に完成した武士という人間は、日本人がうみだした、多少奇形であるにしてもその結晶のみごとさにおいて人間の芸術品とまでいえるように思える」峠のあとがきで司馬が書いている。
 惰弱になった日本人は、もう一度この「サムライスピリット」を考えなおさなければいけない時期にさしかかっているのではないか。わずかにオリンピックで頑張っている戦士、野村忠宏内柴正人にサムライの片鱗を見るのみである。
(それにしても日本柔道陣は頑張っているなぁ)