女児の絵、潜む予兆ってか

 私の妹が小学生低学年のころの話だ。
 担任の教師が血相を変えて両親を学校に呼びつけた。
「お宅のお嬢さんを特殊学級に入れなければなりません」
 妹は私よりもアホだったが、小学校入学前に自分の名前も書けたし、簡単な計算くらいはできた。一緒に遊んでいてわかるのだが、普通の子どもだった。
「なぜか?」と、両親は先生に尋ねた。
 先生はおもむろに画用紙の束を出して、両親の前に広げたそうだ。そこには骸骨の絵がいくつも書かれていた。先生は言った。「異常です。こんな絵ばかり書く子どもを私は見たことがありません」
 両親は妹を特殊学級へ入れるべきか真剣に悩んだらしいが、結局、学力は充分にあったので普通学級で様子を見ることにした。その後、妹にはとくに変った様子はなく、ごく普通の児童として小学校を出て、どちらかといえば活発で優秀な生徒として中学校を出て地元の進学校に進み、現在は普通のおばさんとして二児の母親になっている。
ではあの骸骨はなんだったのか?
 答えはいたって簡単で、当時、小学校の高学年だった私は、マンが家になろうと一大決心をし、せっせと骸骨の絵を書いていたのである。妹は私の傍らにいて、兄貴が骸骨の絵を書くのを見て、それを真似していただけのことだった。
 佐世保の女児殺人事件のことである。加害者の女児の書いた赤い犬の絵がいろいろと取り沙汰されている。「ええっ!絵でそんなことまでわかってしまうのか」というほど、犯罪心理学の先生の分析は細かい。
 きっと妹の書いた絵を見ても「小学校低学年でこんな恐ろしい骸骨の絵を書くとは、自己像の混乱、自我の崩壊、ストレスの高まり、異常行動・・・」とか、言うんだろうか?なんだか占いを聞いているようなんだよね。