とある市長選の話

 先の日曜日、愛知県碧南市で69歳の現役と64歳の新人が市長の椅子をめぐって火花を散らした。現市長は3期目を目指す元市職員、新人も4年前まで市職員だった。二人は行政の中枢を担った上司と部下として働いていた。後輩のほうは先輩の詩人市長に比べて政治に色気が多分にあったという。本当は4年前に出馬したかったのだが、「3期目はない。禅譲する」という先輩の話を真に受けて一期、待った。凡人には理解できないけれど、首長という職業はよほど魅力的なのかねぇ。先輩は約束を反古にして3度目も出ることになり、後輩にしてみれば、「話が違うじゃないか」ということで全面対決となった。という、どこにでもあるような噂が地元ではまことしやかに流れている。
 結果として現職がWスコアに近い票差をつけ大勝した。いい戦いをするのでは、という観測もあったが、新人の年齢が高すぎる。せめて50歳代であったならもう少し善戦ができたのだろうが、64歳の新人ではいかに市政刷新をうったえても、新鮮味に欠けていた。
 首長の職にどれだけ意欲があっても、恋々としていても、時という味方がない限り権力を手中におさめることは叶わない、という典型的な選挙となった。また詩人で権勢欲などなさそうに見えた人物でも、一旦、権力を手にすると人変わりするものなのだ、という当たり前のことを再認識させられた。
 とある市長が言っていた。「市長は3日やったらやめられない」そんなものか。凡人にはさっぱりわからないのである。