手を変え品を変え悪徳業者はやってくる

 昔から、盗人の種は尽きねえとは言うものの、それにしても世に犯罪者の多くなったことよ。
 点検商法というものが、流行っているそうだ。そういえば実家の母親も、急に電話をかけてきて、「屋根を直すことにした」と言うではないか。詳しく訊いてみると、どうやら点検商法に引っかかったらしい。「契約をしてしまったから」という母親のためらいを尻目に、即刻、クーリングオフをした。すぐに業者が飛んできて、「うちはそういう悪徳業者ではない」「近所にも工事にくるのでお安くできる」「今、手当てしておかないと屋根が腐って落ちてくる」などなど、まくし立てたが、「知人に工務店があるので、そちらでやることにした」の一点張りで、退けた。その後、未練たらしく何度か電話がはいったが、こちらにまったく気がないことを悟ると、電話はかからなくなった。
 布団だの、浄水器だの、消火器だのいんちき販売の種は尽きない。そういえば昔、訪問販売で、アルカリイオン水を作る器械を売るというセールスマンがいた。手口はこうだ。従業員分の弁当を持参して事業所を訪れる。弁当を食べさせながら、身体をアルカリに保つ必要性を説く。食後にリトマス試験紙を舐めさせると、そりゃぁ赤く(酸反応)なるでしょう。自分はあらかじめ浅田飴を口に含んでいるので、青く(アルカリ反応)なる。
「健康を維持するためには、アルカリの体質をつくらなければいけない。そのためにはこの器械で水道水をアルカリイオン水に変え、それでご飯を炊いたり飲用したりするのが一番いい」
「今なら、特価で1割引にできる」と、言うと、30人程度の従業員のなかで、数名は契約書に記名捺印する。わずか30分で10万の稼ぎだ。
 やはり母親が買わされていたが、この器械は胡散臭さかった。両側に電極のついた弁当箱ほどの水槽に水をいれ、スイッチを入れると水槽の両端にある電極から電極にイオンが飛んで、水が変化するのだそうだが、その過程で、白い粉末を水に溶かすという作業を忘れては行けない。その粉はカルシウムである。それを入れれば水はアルカリになるのはあたりまえで、それを入れるなら器械自体はいらない。
 こんなのも含めて、たちの悪い訪問販売はあとを断たない。見知らぬ訪問者は盗人と思え。世知辛い世の中になったものだ。