ランボーは町から追い出された

鶴瓶の家族に乾杯」というNHKの人気番組がある。
 私はこの番組が嫌いだ。
 この番組の底に流れている思想が嫌いなのである。
 番組は、鶴瓶ともう一人のタレントがふらりとどこぞの町へ現れる。そこで行き当たりばったりに地元の人に声をかけていろいろな話を聴いたり、体験をするというものである。
その過程で、鶴瓶たちはしきりに「いい人、いい町、いい家族」を連発する。そりゃぁそうでしょう。突然アポなしで現れた人間に、嫌な顔も見せずに時間を割いて、その人物が望むことをさせ、食べたいものを食べさせ、散らかった居間に通し、ギャラもないのにだらだらとテレビカメラの前に姿をさらしてサービスするのである。いい人に決まっているし、いい家族に決まっている。
 しかし、視聴者は世間がそれほど人情に厚くないことを忘れてはいけない。約束もなしに家に上がり込んでそこいらにあるものを覗き見し、つまみ食いする無法者に、誰が笑顔を向けるだろうか。それが鶴瓶だから苦笑い程度で我慢するし、メディアの中で活躍している人物だから、親身になって世話をやくのである。
 そこに出演者も製作スタッフも番組を作るためにつけこんでいる。要するに一般人をばかにしているのだ。
鶴瓶の言葉は関西弁ではあるが柔らかい。しかし彼が地元の人を引き連れて通りを闊歩するすがたは、いかにも横柄である。彼らのあつかましさを見るにつけ「ああ、こいつらが今貴族なんだな」と思い知らされる。
 もうそろそろ一般人をばかにしたこの手の番組は制作するのを止めたほうがいい。