朝生は続く

 年末に書庫の整理をしていたら1冊のファイルが現われた。「セミナー全記録16.1.24」と背に書かれてあった。他の資料とともに机の傍らに積んでおいたのだが、年が改まってそれを手に取った。懐かし〜。2日前の日記でも書いたけど14年前の1月に渋谷で開催された日垣隆さん主催のセミナーの記録だった。その時、「コラムを書け」という宿題が出て、正月休みに必死こいて800字の文章を書いたことを思い出した。それが運よく選評会で参加者から評価を受けて入賞をした。講師選のなかにも辛うじて入ることができ、これで樹に登ってしまったわい(笑)。

 そんなことはどうでもいい。その時のコラムの題材として取り上げたのが「朝まで生テレビ」だった。つい二、三日前に「朝生」を見たばかりだったので、ついつい懐かしさも手伝って読み込んでしまったわい。平成15年元旦の放送の回に出演した人たちの特徴を誇張して800字の文章にしたものである。その時に使わせてもらったのが、司会の田原さんは当然のこと、その他に武見敬三氏、福島瑞穂氏、小林よしのり氏、原口一博氏、姜尚中氏、宮崎哲弥氏などだった。

 今年の元旦の「朝生」では、司会の田原さん以外は総替わりしている。当然ですよね。14年も経っているのだから。田原さんの脇には、大島渚監督や野坂昭如さんではなく、政治家枠として片山さつき氏と長妻昭氏が座っている。その他に井上達夫氏(東京大学大学院教授)、森本敏氏(拓殖大学総長)、三浦瑠麗氏(国際政治学者)などが陣取る。その他にも出演者は何人もいるけれど、おおむね上記の5人が中心に議論は進んでいく。
 末席にお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔がいた。年末の漫才コンクールかなにかで、政治ネタをやって話題になったのをディレクターが目を付けたのだろう。芸人が「朝生」というのも珍しい。どんな発言をするのかが楽しみで彼を中心にみていた。でもすぐに飽きてしまった。椅子に膝立ちになって議論に割り込もう割り込もうとするファイトは良しとしたいが、如何せん「無知」だった。かなりの学識を有する他のパネラーでも井上氏と長妻氏の激論に割って入るのは至難の技なのである。それを村本くんは「無知」をさらけ出しながら強引に割り込んでくるのだが、これが番組を壊している。ひどかった。
 小林よしのりさんは、「無知による反戦平和主義」と看破した。なにしろ「非武装中立」などという前世紀の遺物を言い立てて、他国に侵略されたら「白旗上げて降参」すると言う。「尖閣諸島は中国に取られてもいい」とも発言し「沖縄も中国に上げればいい。元々中国から取ったんでしょ」などとハチャメチャな珍論を開陳する。
 真面目にパネラーの議論に耳を傾けていると、村本が突然変なことを言い出してずっこけるのであった。「9条も読んでいないから説明しろ」と言い出す。おいおい。「自分も読んでいないが多くの視聴者も解らない」って「朝生」を新年早々に見ている視聴者は、憲法9条くらい知っているって。お前と一緒にするんじゃない。
「朝生」を20年くらい見てきたけれども、これほど浅薄なパネラーはなかなか見たことがない。少なくともある程度の論客でなければならないはずが、単なる無知な芸能人を座らせてしまったことは製作サイドの大きなミスだと思う。あるいは人寄せだとしたらその目論見はあるていど当たったのかも。今後、番組の趣旨を変えていくのならいいけれど、まぁ1回限りの色ものになるんでしょう。

 14年前の話にもどるが、その時の「朝生」でも「北朝鮮」の問題が出ており、そのことを大きく取り上げていた。あれから長い時間が過ぎ去ったが、いまだになにも進展せず、解決せず、悪化し続けているのが現実だ。ああ、そういえばあのときにも変なパネラーがいたなぁ。北朝鮮のことばかりを擁護する吉田康夫というアホ。コラムではこのおっさんに登場してもらって、こう言わせている。
「つまり、なんと美し平壌京、いい国つくろう北朝鮮なんですよ」
彼はずっと北朝鮮を擁護してきた。彼のブログ
http://www.yoshida-yasuhiko.com/northkorea/
は平成25年に更新されたっきりで、その後、なにを活動しているのかまったくわからない。彼も学識者というわりに知識は乏しかった。彼が消極的だった拉致問題はまだなんの目途も立っていない。