キャバレー

 松尾スズキ『演技でいいから友達でいて』(岩波書店)を書庫から出してきて読んでいる。もうずいぶん有名になっているけれど、ちょいと昔は「知る人ぞ知る」演劇人だった。参勤ではNHKの木曜時代劇「ちかえもん
http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/chikaemon/
で、近松門左衛門の役をやっていた。ワシャの中ではそれほど上手い役者という感覚はない。でもね、演出家としての交友は広く、中村勘九郎(十八世勘三郎)や串田和美野田秀樹柄本明らとも演劇論を闘わせている。ゆえに演出家としての彼の才能は高い。
 松尾さん、本の中で「エロ」についてこう言っている。
《満開なことがエロのすべてだとは言いませんけど。(中略)僕はあんまり満開でギラギラっていうのはダメですけど》
 その彼が、「キャバレー」を引っ提げて三河にやってくる。1970年代にライザ・ミネリという個性的な女優を得て製作された映画である。彼女はこの作品で主演女優賞をとり、その他にも監督賞、撮影賞、音響賞など7部門を独占した。ライザ・ミネリがエロっぽかったなぁ(ワシャは中学生だったけど)。
 そのライザ・ミネリが演じた歌手サリーを長澤まさみが演じる。ショーガール姿の長澤まさみライザ・ミネリに負けず劣らずなかなか「エロ」いですぞ(笑)。
 案内にはこうある。
《猥雑で耽美でエロティックなデカダンミュージカルの傑作》
 これをご覧あれ。
http://natalie.mu/stage/news/196863
 やったー!長澤まさみの成長は著しい。
「キャバレー」、松尾スズキ演出、長澤まさみ主演と3つ揃えば、もう行くしかないでしょう。
 舞台は、ナチス台頭前夜のベルリンである。キャバレー「キット・カット・クラブ」では夜ごと頽廃的なショーが繰り広げられている。その店の歌姫であるサリーと留学でイギリスからきた青年との恋を軸にしていろいろな人間ドラマが展開する。息苦しいナチス時代の直前に花開いだ爛熟の時、そんな雰囲気が感じられればうれしいですな。

 2005年に倉本聰の脚本で『優しい時間』というドラマが放送された。出演は寺尾聰大竹しのぶ、その息子を嵐の二宮和也が演じている。富良野にある喫茶店「森の時計」などで交錯する人々のほろ苦いドラマになっている。これで長澤まさみが女優デビューをしている。少し屈折した少女をうまく演じている。「この子いい女優になりそうだな」と思ったら、見る間に成長を遂げで、今や「真田丸」のきりさんに「キャバレー」のサリーちゃんだ。今後の活躍が楽しみな女優である。