カッキーン!

 いやぁ先週末は大変だった。週末に友だちとある居酒屋に行ったのだが、そこで生牡蠣を食べた。その店はなにしろ牡蠣が美味く、夏場は岩牡蠣、冬場はセル牡蠣のいいのがはいる。でもね、客も知っていて、午後6時30分を過ぎるころには、生牡蠣がなくなってしまう。客同士の競争になるんですね。だからよほど早く行って注文するか、予約を入れるかしないと、なかなか生の牡蠣にはありつけない。
 でね、その時は運よくあった。もちろん注文する。プリップリの牡蠣が2つ皿に並んで登場する。う〜ん、生牡蠣ってどこか色っぽい食材ですよね。これにレモンを少しだけ絞って、素材のもつ塩味だけでいただく。数度咀嚼し、そこに熱燗を流し込む。
「うまし!」
 2つ目には醤油をちょいとたらす。牡蠣の上にのっているネギを落とさぬように、そのままつるりといく。もちろんそのあとをすぐに熱い酒が追う。
「日本人でよかった」

 楽しい宴は終り、帰宅した。この酔いを醒まさぬうちに布団に入ってしまえば、少しは寝られるだろう。そう思って、早々に横になった……のだが、どうも胃のあたりに違和感がある。いつもの胸やけとはやや違う。目はしょぼしょぼとしている。目は眠りたいのだ。しかし、胃がそれを拒んでいる。家に帰ってから3時間ぐらい経過するのだが、やはり同じだ。とりあえず起き出して、居間に行ってテレビをつける。4時間が過ぎたとき、胸がむかむかしはじめる。う〜ん、昔はこんな感じをよく味わったものだが、最近呑み方が上品になって、吐くまでのようなことはしない。もちろんその日も、ビール1杯と熱燗2合だから、ほろ酔いといったところだ。吐くことなど絶対にないわさ。
 しかし、この悪心である。牡蠣が原因だなとすぐに解った。貝毒は摂取してから4時間程度で発症すると記憶している。計ったように4時間、ううむ、それしかないな。ならば手当は早い。とにかく体内から貝毒を外に出してしまうことである。まず、温めの湯を沸かして、それをグビグビと飲む。そして全部吐く。また湯を飲む。吐く。飲む。吐く……これを繰り返す。その内に下からも水瀉が始まる。もうトイレから離れられなかった。一晩、トイレに近い居間のこたつにもぐり込んでいた。トイレ、保水、こたつ、トイレ、保水、こたつ……で結局一睡もできなかった。
 明け方になって吐瀉が収まり、水瀉の間隔もひろがってきた。
 昼過ぎから、ワシャの主催の講演会があって、そこへは講師への義理もあって、欠席というわけにはいかない。ただ腹の中にはもうなにも入っていなかった。スポーツドリンクが胃に少々たまっているくらいで、体の軽いこと軽いこと。外に出て、風に吹かれたら、ひらひらと飛んでいきそうだわさ。
 とにかく体だけでもきれいにしておこうと、温タオルで全身を拭いてひらひらと出勤をする。いつもならケッタマシーンで自転車道を疾駆するのだが、とてもそんな体力は残っていなかった。だから久しぶりに車で出勤しましたぞ。
 よれよれで講演の司会を務めて、なんとか無事に終わることができた。その後、家に帰ってお粥をすすって、早々に布団に入った。その夜はぐっすりと眠ることができた。めでたしめでたし。