時代劇よもう一度

 テレビ愛知で「名奉行遠山の金さん」が最終回をむかえた。もちろん再放送のもので、松方弘樹が金さんを演じたシリーズである。最終回は「消された刺青・仮面の裏の悪魔」、第7シリーズの最終作品で、悪役として若い遠藤憲一が登場している。
 物語はともかくも、クライマックスは、若い町娘が盗賊団に捕まるところから始まる。盗賊団の首領は「冥途の土産に事の顛末を……」と言い出し、悪事の数々をペラペラと話し始める。町娘が悪党の手にかかろうとするその瞬間に、遊び人の金さんが登場する。
「この桜吹雪がみんな聴いちまったぜ」
 それから大立ち回りが始まる。浪人者ややくざ者が次から次へと金さんに斬りつけていくが、そこはそれ(笑)、金さんはスーパーマンですから、敵をバッタバッタと峰打ちで倒していくのであった。
 おっと、その浪人者の中に、あの福本清三さんがいるではあ〜りませんか。それも松方さんがポーズを決める時、きちんと松方さんの背後に風景としてきっちり映りこんでいる。福本さん、いい仕事をしておられる。こんなことを5万回も続けてこられたんですね。
 そして最後のお白洲の場面では、悪い奴がずらずらと並んで座らされているのだが、その中に福本清三さんはいない。なぜか。悪人の中でもその他大勢の斬られ役というところもあろう。斬られるときは一番いいポジションで斬られている。斬られ役では中心人物である。だったらお白洲の出番もあってもいいじゃないか……とは思うのだが、いやいや、お白洲に並ぶと、まず、斬られない。その上に遠山金四郎の桜吹雪を魅せられて、それぞれが驚き、悔しがり、切歯扼腕する表情を見せなければならないのだ。この演技が、福本さんには難しい。福本さん、目がいい人目で、演技といえどもウソがつけない(笑)。だから剣戟以外のところにはなかなか出てこないのであろう。
 NHKの時代劇「ぼんくら」に福本さんが出ていたそうだ。主役は、岸谷五朗だったので、見ていないのだが、福本さんが出ているなら惜しいことをした。