かんざし

 今、名古屋市美術館で「上村松園展」が開かれている。その中に気になる絵があった。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/photos/130313/wlf13031314010009-p1.htm
「娘」と題された作品で、若い娘二人を配して、春を象徴的に描いている。着物の裾模様も桜と梅、向かって左側の娘の帯は藤である。右側の娘が持つ扇子の先に、蝶が舞う。松園、55歳の時の作品である。絵師として脂ののってきた頃のいい作品だと思う。
 それはいいのだけれど、問題は娘の挿すかんざしである。上の絵では見にくいけれど、座っている娘のかんざしが気になって仕様がない。前髪に八の字に挿した半透明のかんざしである。この素材は何なのだろう。薄い黄色を帯びている櫛やかんざしは鼈甲である。髷に挿した飾りかんざしの足も鼈甲だと思う。
 しかし、この白い半透明の飾りかんざしはわからない。象牙なら透明ではないし、昭和5年にプラスチック素材があるとは思われぬ。何だろう。「白鼈甲」という素材もあるのだが、それは黒の混ざらない飴色だけのものを指している。そもそもこんな素材が存在するのだろうか。