アホ二題

 安倍首相が経済の建て直しに奮闘している。昨日、緊急経済対策が閣議決定された。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130111/t10014731781000.html
 その中では復興、防災、地域活性化などの重点分野が示されている。いいことだ。とにかく鳩山、菅、野田で落ち込んだ景気をなんとか建て直してほしい。永田町、霞が関の陣頭に立ち、采配を振る安倍さんを好意的に見守っていこう。

 でもね、安倍さんの指揮を受けて、本来なら戦場を先駆けなければならない官僚軍の動きが悪い。とくに文部科学省の鈍さはどうなっているのか。確信的背信と言ってもいいだろう。
 一例を挙げる。文部科学省は全国の老朽化している小中学校の改修に補助を出している。すでに家庭では便器の洋式化が進んでいるが、未だに和式ばかりという学校も多い。それに暗い、汚い、臭い、怖い……と、古い学校のトイレは敬遠されている。
 そこで某自治体が、経済対策の前倒しも含めて大々的にトイレ改修に入ろうと考えた。安倍首相の考え方にも合致するし、なにより子供たちの学習環境の整備である。どこからも異論は出るはずがない。そう思って動き始めると、なななんと、当の文部科学省――あるいは県担当者の思惑が大きく入っているのかもしれないが――からストップがかかった。
「内定前に動くことは罷りならぬ」

 少し説明をしたい。
地方自治体は国や県から補助をもらって公共事業を実施することがある。その場合、補助申請を、自治体→県の出先機関→県庁→国(この場合は文部科学省)と順を踏んで上げていく。そして申請が認められれば、国→県庁→県の出先機関自治体と内定が下りてくる。ハードルが多いでしょ。このハードルひとつひとつに担当者、係長、課長、部長などという決裁する人がいて、小学校の臭いトイレを直すのに、はたして何人の思惑がはさまってくることやら。
 まぁいろいろなケースがあるがともかく手数が多くかかることはご理解いただけると思う。このため新年度早々に申請を上げていっても、内定が下りてくるのは6月中旬となるわけだ。
 この6月中旬というのが曲者である。学校のトイレ改修と言えども、設計、入札、契約などそれぞれに法的な手続き・書面が必要であり、これらには逐次決済が必要となる。業者の方にしても、契約後に資材調達、人的手配に含め施工計画などを作成しなければならない。多分、設計は内定前に準備することが可能だろう。しかしそれ以降の事務は「内定前に動くことは罷りならぬ」というしばりに引っかかる。これらの準備が1カ月でできるものかどうか、少し考えれば解かりそうなものだが……。
 また、学校は通常の工事とは違って、工事期間が限定される。普段は子供たちが勉強をしているわけで、そこで大きな騒音を立てて工事をするわけにはいかないでしょ。だから「夏休み」が工事に当てられることがほとんどのケースと言っていい。短期に集中して工事を実施せざるをえないのが学校の工事の特徴なのである。

 つまり、6月中旬内定そのものが、工事ができない仕組みになっている。だから弾力的な運用をしてきたのだが、前文部科学大臣田中真紀子さんが大学の許認可申請を蹴ったくった事件の際、認可ありきで大学が動いていたことに対して批判がでたことがあった。保身に汲々としている官僚どもは、そのあおりで「内定前に動くことは罷りならぬ」という方針を出してきた。子供のことや現場のことなど何も考えていない。自分たちのキャリアに傷がつかないことが最優先なのである。
 話を元にもどす。
 内定前に動かなければ、子供たちに迷惑を掛ける。しかし、動けば国庫補助はもらえない。だから財政的に体力のない基礎自治体は、一気にできる工事を2か年に分けて施工することで、夏休み施工と国庫補助の双方を確保する算段をしなければならない。1回でできることを2度に分散させる手間も手間だが、経済対策のための工事の前倒しが「後倒し」になっているのである。
 安倍さんの足を官僚が引っ張っている典型と言っていい。

 サンデーモーニングのコメンテーターをしている涌井史郎さんがこんなことを話していた。
文科省の官僚はバカばかり。東京大学は出ているかもしれないが、現場で教鞭をとったことがないから、実際の学校の状況をまったく理解していない」
 これは地方では当たり前の話で、元首相の鳩山さんが東京大学卒業ということに思い当たれば判りやすい。鳩山由紀夫さんが文部科学省じゅうにたくさんいるところを想像してくだされ。現場を知らずしてピーピーピーピーくちばしを挟んでくる。ぞっとするでしょ。
 鳩山さんに話が及んだのでついでに。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130110-OYT1T00573.htm
 支那中国がすごい一手を打ってきた。中国共産党の招きで鳩山さんが訪中するという。鳩山さん、この手にまんまと乗せられてしまった。困ったものだ。本人は普天間の時と同じで、まったく現状を理解していない。しかし、やる気だけは旺盛で「日中関係の改善に寄与したい」と言ってはばからない。
 こんなこともこの人は言っている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130110/plc13011021310021-n1.htm
「私が首相時代には領土問題は起きなかった」
 本当に自分の見えない人だ。あなたの時代に領土問題の火種を抱えこんだということに思いが至らない。アホと言って差し支えないだろう。
 友人の橋本大二郎氏は鳩山さんを「善人だが中身がない、世間を知らないお坊ちゃん」と評していた。こんな人が北京に行って、外交巧者の漢人の手練手管に引っかかれば「尖閣は中国のもの」などと言いだしかねない。
 安倍外交が動き出したばかりである。この大切な時期にこういった軽率な人物をうろうろさせるべきではない。