岩手の現実

 昨日、岩手県の災害状況をかなり詳細につかんでいる人と昼食を共にした。その人の話は具体的かつ客観的で、偏向したテレビ報道では伝えられないことがいくつも出てきた。

 その時の話をいくつかご披露する。
 まず、瓦礫についてである。瓦礫について言えば、建物の残骸は、すでに10%ほどの処理が済み、その後の処分も県内でほぼ目途が立っているという。
 ただ、問題なのは瓦礫に混じっている土砂なのだそうな。もちろん建物瓦礫に付着したものもあれば、混在したものもある。瓦礫よりも土砂のほうが多く、この処理が厄介らしい。津波に撹拌された土砂には何が含まれているのかがまったくわからない。もちろん放射能ということではなく、PCB、水銀、鉛などの有害なものという意味である。こういった物質の混入の可能性があるので、土砂処分は、成分分析から始めなくてはならない。だから、処理が進まないということだった。
 どこぞの知事がパフォーマンスでぶち上げている「瓦礫処理」は被災現場から言わせてもらえば、的外れもいいとこらしい。

 支援についてもすでにステージが変わっており、従来型の労務ボランティアの必要性は薄くなっているという。人的支援の次の要望は、メンタルな部分への支援ができる人材が望まれている。例えば保健師とか保育士、老人介護の現場で相談業務に従事していた人とか、あるいは今こそ芸能人が大挙して被災地に入って、被災者に元気を贈るべきなのである。
 しかし、一過性の被災地支援パフォーマンスの熱は冷め、今はどれほどの芸能人、有名人が被災地に足しげく通っているのだろう。もちろん、地道に活動を続ける人もいるだろうが、大方の芸能人は足が遠のいている。これがらが本当の支援だというのに、これまた的外れと言っていい。

 自治体の規模をはかる指標に「製造品出荷額等」というものがある。岩手県のそれは、平成22年度で約2兆円。平成23年度は震災の影響もあってそれを大きく下回るだろう。でもね、この数字、例えば東海地方だと、刈谷市だけで1兆5000億円の規模がある。隣接の安城市と揃えれば3兆円で、軽く岩手県を凌いでしまう。
 東北6県に拡大して考えても、震災前の統計だが「製造品出荷額等」は17兆円になる。ところが、西三河の6市だけで17兆円を超える。面積にして、東北の2%の面積のところで同規模の「製造品出荷額等」を支えているのだ。
 別段、西三河の優位性を誇示するために数字を並べているわけではない。それほど東北への企業立地が進んでいないということを言いたいのである。これは、もちろん国策の誤りと断言していい。日本の国土を、金太郎飴のようにどこを切っても同じにしてしまったセンスなき中央政府の遺漏である。もう少し日本の国土をうまく利用していればこんなことにはならなかった。

 とにかく、未だに東北の復興は見えない。国会議員で真剣に奔走しているのは、津波で奥さんやお子さんを失った民主党黄川田徹さんだけである。あとのお歴々はもう過去の話になっているらしい。もっと真面目にやれよ。