それを言っちゃぁおしまいだよ

 昨日の中日新聞に《論文を書きに行っているわけではない》《議員執筆に山本県議が疑問》という見出しが躍った。
 内容はこうだ。
 最近、県会議員の公費視察が批判されている。そんな中で、なんとか活路を見出そうとする自民系の県議が、視察報告書を自費出版した。それは良いことだろう。その出版会見の場で田原市選出の山本浩史議員がこう言ってしまった。
「論文を書きに行ってるわけじゃない」
「報告書はそれぞれ専門家がつくった方が、クオリティーの高いものができる」
「現地に行くことが目的であって、報告書づくりに行っているわけではない」
「報告書づくりで政治活動が削られている。議員が調査内容をしっかりと伝えて、議会事務局がつくるのもありだ」

 違う。
 そして、甘い。
 
 まず、山本議員のオフィシャルウェブサイトのプロフィールをご覧いただきたい。
http://hiroshinet.com/profile.html
 プロフィールでは40歳になっているが、42歳の若手県議である。公式サイトなんだから、きちんと直しておこうね。
 さて、山本さん、町役場職員から、町議会議員に転進し、その後、県会議員になった。叩き上げと言っていい。きっと馬力のある人物なのだろう。しかし、発言が甘い。県議会議員の職にあぐらをかいていてはダメだ。
 まず、海外視察は報告書を書くために行っている。そして、報告書はただの報告ではなく、論文であるべきだ。政治家なんだから、持論を立てなさいよ。日本福祉大学で卒論書いたでしょ。その時の要領を忘れちゃったかにゃ(笑)。
「議員が調査内容を(議会事務局職員に)しっかりと伝えて」
 と言うが、それは口頭なのだろうか。記事の中では、同行した職員にメモなどを渡して書いてもらっていたらしい。こんなかたちで出来上がったものは、議員の報告書ではなく、視察随行した職員の報告書でしかない。
 そもそも、議員が楽をするために、大名旅行をするために、職員を随行させるんじゃない。その旅費だって県民の税金なんだぞ。議員だけで旅行を完結できないなら行くな!
 そして、これが重要なのだが、「日本に帰ってから、自身の筆で、読むに耐える論文を書く」このプレッシャーがあってこそ、視察に身が入り、調査内容も深くなるのである。県民に読まれる文章を書くためには、対象に真剣に向き合い、必死にメモを取らなければならない。あるいは視察前に視察対象に関しての本を読み込むなどのインプットも必要だろう。その上で、1週間の視察なら、大学ノート10冊くらいの取材をしろよ。それが、県民の負託に応えるということだし、県税を無駄にしないことにもなる。
 冒頭の発言をすること自体、山本議員に自覚がないと言われてもしかたがない。まぁ小僧議員によくあるタイプではあるのだが。

 そして、決定的な問題は、山本議員のブログを読むと解る。写真ばかりで文章が少ない。政治家は「言葉」が武器である。それを駆使せずして、なんのブログか。それにね、文章がうまくない。それはなぜか。ちゃんと文章に向き合っていないからである。
「論文を書きに行ってるわけじゃない」などと言わずに、「論文を書きに行っています」と断言して、自身の手で真正面から持論を文章にしなさいよ。自らの思いをぶつけなさいよ。
「報告書づくりで政治活動が削られている」
 と言うが、「政治活動」などという実態の見えないものに逃げずに、具体的に示せる報告書を書くほうが、よほど政治活動だと思うがいかがかな。それに政治活動をどうしてもしたければ、睡眠時間を削ってでもすればいい。それが政治のプロということではないのか。
 まぁ、四の五の言わずに、報告書を書きましょう。そのことが、必ず議員自身のスキルアップにもつながるから。頑張れ。