昭和天皇伝

 司馬遼太郎記念館会誌の『遼』が届いた。もう42号を数えるのか。この会誌は年4回発行されるので、そうか、創刊号からもう10年も経ったんだ。
 さて、『遼』である。今回は、第15回司馬遼太郎賞の決定が特集されている。受賞者のお一人は、京都大学大学院教授の伊藤之雄(ゆきお)さんだった。受賞作の『昭和天皇伝』(文藝春秋)はワシャの本棚にちゃんとある。なかなか目が高いでしょ。
 内容は、もちろん昭和天皇の伝記である。とくに青年期から中年期にかけての描写が素晴らしい。そのことは、選考委員の松本健一さん、関川夏央さんも指摘しておられる。昭和天皇というと、どうしても右左ともイデオロギーの色眼鏡でしてしまうのだが、伊藤さんは、どちらにも偏せず確実な資料のみでこの本を紡いだ。昭和史に興味のあるかたは、ぜひ、ご一読を。