クズは未だに蔓延っている その2

(上から続く)
「ボクチン、帰る」
 と立ち上がり、部屋からスタコラ出てきてしまった。あわてたのは件のニーチャン、カモを逃がしてなるものかと追いかけてきた。
「ちょっと待ってくださいよ」
「用事を思い出した」
「もう少し話を聴いてくださいよ」
「だめ、あんたの話、面白くない」
「そんなこと言わないでくださいよ」
「あ、ここらに公衆電話ない?」
 当時は携帯などというシロモノは存在していない。
「1階の入り口にあります」
 ワシャは公衆電話で女友だちに電話をして退社後のアポを取りつけた。彼女との約束まで1時間ほどある。ワシャは、見張りに張りついているニーチャンに声をかけた。
「コーヒーをおごってくれるならもう1時間だけ話を聴くことにする」
 ニーチャンは大喜びでコーヒーをおごってくれた。1時間後、ワシャは英語教材の契約をせずに暗くなった名古屋の街に消えたのだった。めでたしめでたし。
 
 あれからずいぶんの歳月が過ぎているが、未だにそんな詐欺をしているクズ連中がいるんだな。そんな思いが不思議な懐かしさとともに甦った。