うどん処「す奈は」 その1

 以前に多治見市に住む知人から「多治見に天ころの美味い店がある」と聞いた。その後、「多治見観光マップ」を入手した。そこに、食のおすすめとして、うどん処「す奈は」という店が掲載されていたので、確認すると「そうだ」と言う。ならば行ってみようとということになった。
 マップによれば、多治見の中心市街地から東隣の土岐市に抜ける県道沿いに印がうってあるので、その道路をずっと走ってみるのだが、お目当ての「す奈は」はみつからない。Uターンしてもう一度、丁寧に探したのだが看板すらないのである。仕方がないのでマップに書いてあった電話番号にかけてみた。
多治見高校前の信号交差点を北に入ってください」ということだった。2度も走っているので、その交差点はすぐに解った。その信号を曲がって、50mほど坂を上ったら右手に「す奈は」は隠れていた。この場所では、「多治見観光マップ」の記載からでは絶対に辿り着けまい。「多治見観光マップ」不親切なり。もっともカーナビがあればどうってことはないのだろうけれど、カーナビやETCなどの文明の機器嫌いなワシャは、当然のことながらそんなものは装着しておらぬ。
 そんなことはどうでもいい。「す奈は」のことだ。
 外観はどこの町にもありそうな平屋建ての安っぽい和食屋といった造作である。特段、目を引くといったたたずまいではない。暖簾をくぐって店内に入っても平凡なうどん屋だった。客の入りは半分、もうすぐ正午であることを考えると、人気店とは言いにくいなぁ。店員さんは「どこでもどうぞ」と言ってくれたので、ワシャは6席ほど並んだカウンター席の右端に座った。壁に「天ころ」「山かけ天ころ」「うめころ」などと書かれた紙が無造作に貼ってある。「天ころ」が目当てで来たのだから「天ころ」といきたいところだが、ワシャは山芋が大好きなんですね。だから「山かけ天ころ」にしたのだった。
(下に続く)