クジラは誰のものか

 和歌山県田辺市の内ノ浦湾に迷い込んだマッコウクジラのせいで地元が大騒ぎになっている。
http://mytown.asahi.com/wakayama/news.php?k_id=31000000905290002
 なんでこんなことが大騒ぎになるかというと、グリーンピースシーシェパードに代表される欧米の環境原理主義者が「クジラは人類の友だち、クジラを救えなければ地球は救えない」などと根拠のない妄言を垂れ流し、反捕鯨を喧伝しているからである。
 そもそも日本を含めたクジラを食用にする文化圏では、沿岸に入りこんでくるクジラを豊穣とみなしている。クジラが人間の友だちかどうかはおくとして、少なくとも地球の貴重な資源であることは間違いない。浜でそのまま死ねば廃棄物になり、浜に埋めるかどこかで処理しなければならない。せいぜい骨格が標本として役に立つ程度だろう。
 外洋へ出すことが不可能なら、今のうちに捕獲して食用に回すという選択もあってしかるべきだろう。環境問題から言っても、地球資源の観点から見ても、その方が正しい選択だと思う。
 日本人は昔から柔軟な思想をもってクジラを含めた自然と共存共栄をしてきた。その点、自然を征服することで文明を築いてきた欧米人――北欧やデンマークは除く――とは自然に対する考えかたを異にしている。欧米人の考え方は正か邪しかない二者択一である。日本人のように程よいところでいい加減にというわけにはいかない。クジラを資源として考えていた頃には、鯨油を取るためだけに無差別に捕獲した。そしてクジラから油分だけを盗り、その他の部位は海洋投棄していたことは有名だよね。
 ひるがえって、クジラ類は友だちってことになると、突然、クジラを殺す捕鯨など罷りならぬとばかりに、クジラを有効に利用していた捕鯨文化を持つ国を締め上げてくる。シーシェパードなどはテロまで仕掛けてくる。いったい奴らは何を考えているのだろう。案外、何も考えていなかったりして……

 地球温暖化でもそうなのだが、CO2が「悪」と決めると欧米は迷いがない。その価値観をぐいぐいと推し進め、その他の考え方や意見には耳を貸そうともしない。一事が万事これである。
 クジラの問題については、秋道智彌『クジラは誰のものか』(ちくま新書)が面白い。環境問題を考える一助にもなる。ご一読をお薦めします。