東西のエスタブリッシュメント

『日本の有名一族/近代エスタブリッシュメント系図集』に京都帝大地理学の初代教授小川琢治(たくじ)の系譜が載っている。長男の芳樹が冶金学者、次男の貝塚茂樹東洋史学者、三男の湯川秀樹が物理学者、四男の環樹(たまき)が漢学者である。茂樹の息子の啓明(けいめい)は経済学者で東大名誉教授。
 西の小川一統に対して、東はやはり鳩山家だ。鳩山家は、幕末に美作藩士の家に生まれた和夫が東京開成学校(東大の前身)を卒業している。彼は外務省、帝大教授を経て衆議院議長早大総長まで登りつめた。その息子一郎(首相)、孫の威一郎(衆議院議員)、曾孫の由紀夫(衆議院議員)、邦夫(衆議院議員)、そして由紀夫の令息まで数えて5代8人が東京大学を卒業している。
 これを見ると「やっぱり頭のいいのは遺伝なんだ」と思えて、アホなワシャとしてはホッとするのじゃ。遺伝じゃしょうがないもんね。
 ところが仲のいい塾の先生からこんなことを言われた。
「頭のいいのは遺伝ではありません」
「え、だったらなんなの?」
「子どもの頭がよくなるか、ならないかは、基本的に母親の姿勢にあると思います。母親が子どもの学習にどれだけ正しい関与できるか、それが問題です」
 そう言えばワシャの母親は、ワシャの子どもの頃に「放任主義」などという本を読んでいたのう。この本のせいかどうかは判らないが、一緒に勉強したり、指導してくれたという記憶はない。ただ「勉強しなさい!」とはよく言われた。
 多湖輝監修『鳩山家の勉強法』(ごま書房)という本がある。そこにこんなことが書いてある。
《親は子どもに勉強を強制するのでなく、勉強するように仕掛けることが大事》
《たとえば夕食後、家族がテレビの前でくつろぎ、団欒をしているときに、「さあ八時になったから、あなたは勉強しなさい」とうながしても、子どもは理不尽な感じを受け、釈然としない(中略)こんなとき、たとえば「さあ、あなたの勉強時間だから、テレビを消してお母さんも仕事しなくちゃ」と立ち上がります。》
 小川家も鳩山家も母親たちの能力が高かった。だから、優秀な子どもが育つ。ワシャの周囲を見ても、母親がしっかりしている家庭の子どもは押しなべて出来がいい。反面、だらしのない母親の子どもは……

 今日は貝塚茂樹の命日である。書棚に先生の著作『中国古代再発見』(岩波文庫)があったので再読してみようっと。