祖父の見識、孫の蒙(話題3)

 吉田茂が自身の著書『回想十年』(中公文庫)の第1巻にこんなことを書いている。
《私が第一次内閣を組閣した昭和二十一年五月頃は、戦後の人心の動揺、物資の不足、特に食料の欠乏と、さらにそうした不幸に政治的に乗ぜんとする共産主義者の活動とに悩まされた時代であった。》
 湯浅氏らが扇動している日比谷の圧力は、吉田首相が懸念していたものと似ているような気がする。違っていればいいのだが……残念ながら厚労省はまんまと乗せられてしまった。
《労働攻勢の方は時が立つにつれて、ますます激烈の度を加えるばかりであった。》
 吉田首相の時も、不安な国民の心情に付け入って労働不安を煽るサヨク、いわゆる職業的アジテーターたちの跋扈には悩まされた。それでも吉田内閣は次々に施策を打ち出し、占領軍総司令部とも折衝を重ね、食糧問題などを解決していく。
 孫の阿呆にこの真似ができるだろうか。マンガばっかり読んでたので、おじいちゃんの見識が詰まっている『回想十年』(全4巻)など読んだことないかもね。一刻の猶予もならないんだということを総理自らが自覚しなければ日本は沈没するぞ。

 日本の現状は国難である。非常時は際立って英明な人材を戴かなければ突破できない。半可通の知識しかないような輩は百害あって一利なしである。
霞が関の片隅に変人はくすぶっていないか。辺鄙な土地にキラキラ輝くような奇人はいないか。