長谷川平蔵

 この人、江戸時代後期の幕臣である。名を宣以(のぶため)、これは読めませんね。幼名を銕三郎(てつさぶろう)火付盗賊改役長谷川宣雄の子として江戸に生まれた。若年の頃は本所あたりの悪所で遊びまくって「本所の銕」という異名をとったくらいだ。このために下情に通じ火付盗賊改の頭に任じられるとその実力を発揮した。う〜む、やっぱし若い頃にはしっかり遊んでおかないといけないのね(笑)。
 池波正太郎の『鬼平犯科帳』で一躍有名になった。歌舞伎役者の中村吉右衛門の当たり役で「鬼平吉右衛門」と言うほど定着している。平成元年から始まったシリーズは全編を通じて丁寧に作られており名作も多い。山田五十鈴とからんだ「むかしの女」、名優島田正吾を迎えての「血頭の丹兵衛(ちがしらのたんべい)」、立ち回りの凄さではシリーズ屈指の「本門寺暮雪」、鬼平の部下木村忠吾(尾美としのり)と盗賊の娘(喜多嶋舞)の悲恋を描いた「忠吾なみだ雨」などなど。
 今季、名古屋御園座陽春大歌舞伎は「鬼平犯科帳 大川の隠居」である。鬼平はもちろん吉右衛門、物語は鬼平と老盗賊の智恵くらべをユーモアと哀愁を織り交ぜながら描いている。シリーズの中でも人気の一作だ。今から楽しみだなァ。