陶のある風景 その3

 いやー、左党(左翼じゃないよ)のワシャがあんみつ屋を気に入ってしまうとは、不覚じゃったわい。それにしても変わった店だ。店じゅうにごちゃごちゃと陶芸作品や絵が飾ってある。それぞれが名品ではないが、なぜか味わいがある。個性的なのだが、お互いに溶け合っている。違和感があるのだが、癒されてしまうのだ。
 店の名前は「AMABIKI」という。天蟇(あまびき)から取ったのだろうか。あるいは京都府船井郡園部町天引(あまびき)のほうか。天蟇なら経営者は九州の人、天引ならそのまんまだ。

 さて、あんみつのことである。この店のあんみつは美味らしい。ワシャは食していないが、ワシャ以外のメンバーがみんな「海のクリームあんみつ」を注文して、口々に「美味しい」と言っていたから、そう断言できる。そのあんみつを見てみよう。
 ううむ、手作りの器に、3種類の天草を8時間煮込んで作った寒天を盛り、その中に丹波産のきな粉を仕込んである。寒天の上にはやはり丹波産の大納言小豆、黒豆、埼玉県産の白玉、その上から波照間産の黒密をかけて、頂上に自家製の黒糖アイスが鎮座しちゃうのだった。
 以上の情報は、メンバーの一人から借りうけた「海のクリームあんみつ」を、食べる前に解体したことで得られた情報である。このため、そのメンバーのあんみつは見るも無残な状態となったが、これもワシャの好奇心を満たすためじゃ。我慢してくれ。腹に入れば同じじゃないか、と慰めたが、ヤツの涙は止まらなかった。
 店内を見まわせば、ワシャが苦労して得たあんみつ情報が、壁にでかでかと張りだしてあったわい。いやー、気がつかなかった。ごめんごめん。