陶のある風景 その1

 京都コンサートホールの東門の前に瀟洒なビルがあって、その地下に「甘味処AMABIKI」という店がある。
 1階の入口に「ランチ」と大書してあったので、6人の仲間とともに階段を降りた。空腹だったのでわき目も降らず、店に入り坐ってから気がついた。ワシャらは普通の飲食店だと思って入ったのだが、ところがどっこい、あんみつ屋だった。ワシャは左党(左翼じゃないよ)なので、甘いものが苦手じゃ。あんみつなんかは以ての外である。辛うじて「冷やしウドン」があるということなので、他のメンバーが「あんみつー!」と喜んでいることもあって、仕方なく腰を据えることにした。

 オーダーをして暫くすると、ほどよく冷えた麦茶がやや造形の歪んだ湯呑みに注がれて出てきたではあ〜りませんか。メンバー6人とも種類の違う湯呑みだった。麦茶を飲んで落ちついたところで、周囲の様子をながめてみれば、あららら、こりゃなかなか楽しそうなお店ですぞ。棚には陶製のオブジェが並べられ、壁には個性的な絵がカンバスのまま幾枚も掛けられている。おっと、よくよく見れば店の入口の横には、電動ロクロが4台も据えてあるではないか。それもさっきまで使っていたらしく、泥がべったりとロクロに付着している。
 むむむ、三河野望窯の主であるワシャの腕がなりますぞ。
「マスター、ちょこっと捻らせてくれまへんか?」
 と、頼もうと思ったが、ランチタイムでマスター以下、従業員はてんてこ舞いの様子だったので、諦めることにする。
(下に続く)