司馬遼太郎の桜

坂の上の雲
《子規の従軍は、結局はこどものあそびのようなものに終わった。
広島で待機し、四月のはじめ、御用船に乗るべく宇品港へ出かけた。
「道端の桜は七、八分咲いて、柳の緑は染めたように芽ざしている。春昼の如しという頃である。」

功名が辻
《醍醐は、上醍醐下醍醐にわかれ、その範囲は五十丁四方、山だけで二十三。その中にびっしりと桜樹を植え、山桜は八分咲きで里桜は九分咲きという景色であった。》
 松の緑のなかに、紅霞がたなびき、花に埋もれて、殿舎、堂搭、茶屋などが点在している。》

街道をゆく 嵯峨散歩』
《対岸の嵐山にはもともと桜がなかった。
「あの山に、花があれば」
と、後嵯峨上皇吉野山から桜を取り寄せて植えさせた。すでに鎌倉の世とはいえ、景観を芸術化するという王朝の伝統はなお濃厚に生きていたのである。》

燃えよ剣
《京は、春のたけなわであった。この宿陣からほど遠くない坊城通四条の角にある元祇園社の境内の桜が満開になっている。
きのう今日、壬生界隈は、花あかりがした。》

 桜の季節に司馬文学の桜を尽くしてみた。「今日はワルシャワ、手を抜いたな」と思ってはいけない。司馬さんの膨大な作品のなかからこれだけを抽出するのに4時間かかってしまった。ま、お蔭で久々に司馬さんに触れることができたのでよかったけどね。