規制緩和事故

 大阪府吹田市で起きたスキーバスの事故を聞き、昭和60年に長野市信更町の国道19号で発生したスキーバスのダム湖転落事故を思い出した。スキー場に向かう日本福祉大学生ら25人が水死するという痛ましい事故である。
 このころスキーが大流行で、ミーハーなワシャもスキーに凝りまくっていた。多い時で年間40日も山ごもりをしている。北信の志賀高原、赤倉、妙高などはメッカだったので何度も19号を往復したものじゃ。もちろん事故現場も知っている。実際に事故を起こした三重交通のスキーバスにも乗ったことがあったので、他人事ではなかった。
 薄っすらとした記憶でしかないが、転落したバスには運転手が2人添乗していたと思う。ワシャが乗った三重交通のバスには、中年の熟練運転手2人が2時間毎のトイレ休憩で交代していたのを覚えている。
 名古屋からで、しかもベテランで、この態勢で運行していたのだ。それが大阪で、新米で、それもたった1人で運転していたのである。乗客は何も思わなかったのか?添乗員が16歳の子どもだよ。「危ない」と感じなかったのだろうか。
 もしこの21歳の若いドライバーが笹平ダムや青木湖の周辺で居眠りをしていたら、と思うとぞっとする。
 平成11年に、貸し切りバス事業の規制緩和で免許制から許可制になって多くの業者が参入して競争が激化した。このため運賃はピーク時の半分にまで落ちている。請負金額が下がれば、必然的にどこかを削らざるをえない。一番簡単なのが人件費である。今、どこの企業でも官公庁でもやっているのが、人減らしだよね。これで1人の人間の負担が増加するのは当たり前だのクラッカーなのだ。
 ワシャには「規制緩和」という言葉が「タガを緩める」という風に聞こえてしまう。タガを緩めた結果、無秩序な入札となり、ずさんな運行計画となる。客のほうも「タガが緩んでいる」から自らに忍び寄っている危機に気づかない。
 人にも社会にもある程度の規制、枠、タガが絶対に必要だと思うよ。