ワシャは長風呂だ。平成7年まではカラスの行水だったが、その年に五木寛之の『読書の秋に悔いありて』というエッセイを読んでから風呂好きになった。
そのエッセイを引用する。
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まず湯かげんはぬる目がよい。ミカンがあれば二、三箇ほうりこんでおく。
バスタブの上にプラスチックの板を渡して、乾いたタオルをひろげる。本が濡れないように二重にタオルを折って、本をのせる。(中略)
おもむろにぬるい湯に下半身を沈めて、本のページをめくる。読書に疲れたら、温かくなったミカンでもむいて一休み。温州ミカンならぬ温泉ミカンだ。皮も捨てずに湯ぶねに浮かべておく。
かすかな果物の香りと、個室の静寂。
天井からポトリ、ポトリと水滴の落ちる音のみがきこえて、気づかぬまに三時間、四時間と至福の時が過ぎてゆく。
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この文章を読んで試してみたらこれがいいんですな。ストレス解消にはなるし、疲れはとれるし、なんといっても読書が進む。残念ながら三時間というわけにはいかないが1時間くらいは湯ぶねに浸かって本を読んでいる。
ワシャの場合は五木さんと違って、バスタブに板は渡さない。出窓に100円ショップで買ったプラスチックケースが置いてあるので、それにタオルを敷いて本を入れておく。その横には手を拭くタオル(あとで身体も拭く)と1/2水割りのダカラのペットボトルを置く。バブをひとつ湯の中に落とし、ペットボトルで水分補給をしながら読む。ちなみに今夜は、阿刀田高の「短編小説のレシピ」だった。
時には2冊の本を持ちこむことがある。この間は4冊持ちこんだ。いちいちプラスチックケースにタオルを敷いて……などと準備をしていると面倒くさいので、「思いきって風呂に本棚を作ろう」と提案したら家族みんなにに反対されてしまった。便利なのに……。
最近、風呂で読書をしていると、必ずといっていいほど学生時代のことを思い出すのだ。何故だろう何故だろうと、思案に暮れておったが今夜ようやく解ったのじゃ。このところ風呂「紅梅の香り」のバブを居れていた。この匂いが学生時代に使っていたヘアスプレーの香りと同じだったんですな。ずっと気になっていたので、あーすっきりした。あしたは「紅梅の香り」を入れて、学生時代に読んでいた小峰元の小説でも読むとするか。めでたしめでたし。