痴呆自治の話

 埼玉県川口市では「全市合同特別町会長会議」という名の公費観光旅行を30年にわたって実施してきた。総勢229人、総額771万円というから大規模事業だ。通算すれば何億もの金がじじいどもの飲み食いに使われたわけである。
 この旅行に関する支出の不適切さを市民が訴え、愚行を白日の下に晒した。裁判所の判決は厳しく、市長と担当課長に対して全額の賠償を命じたのである。
 ここで問題となるのは、前例踏襲、自治体横並びを主張した課長のまぬけさもあるのだが、ひそひそと行政を食いものにしていた意地汚い町会長の存在も大きい。1995年頃は、そろそろ行政支出での食料費の問題がクローズアップされはじめた時期に重なっている。推測でしかないが、行政内部では700万もの支出に対して疑問を投げかける職員もいたに違いない。しかし、厚顔無知な地元会長の「飯を食わせろ、酒を飲ませろ、女を侍らせろ」という圧力に旧態依然とした担当課長が乗ってしまったのである。
 この件で市長と課長が詰め腹を切らされたわけだが、同行した議員や町会長にも負担をさせればいい。根底には住民の行政たかり問題が横たわっているのだから。