神の国

 昨夜、読書会。課題図書は、渡部昇一『日本人論』(扶桑社新書)。前回、欠席した人がいて「ぜったいにワルシャワさんのチョイスだと思った」と言っていた。が、これはワシャのチョイスではないんですな。おそらく読書会の課題にならなければ読まなかった。
 もちろん渡部昇一さんの本はあまた読んできた。切っ掛けは『知的生活の方法』(講談社新書)である。この本は40年前に出版されたものだが、なんど読み返しても古くならない。その都度、ワシャの人生に知的ヒントを与えてくれ、刺激になってきた。名著と言っていい。以後、『レトリックの時代』(ダイヤモンド社)、『アングロサクソンと日本人』(新潮選書)、『日本史から見た日本人』(祥伝社)、『読書有訓』(致知出版社)、『思考の方法』(海竜社)など20冊ほどが棚にある。「影響を受けていないか」と問われれば影響を受けているでしょうね。ただ『知的生活の方法』で受けたショックを思えば、以降の本は想定内だった。「ターミネーター」や「ダイ・ハード」でも第一作は衝撃的だったでしょ(笑)。

『日本人論』だった。相変わらずの渡部節が展開されていたので読みやすく、内容も想像の範囲内だったから、270ページをこえる厚い新書でもすんなり読めた。帯に書いてある「一国で文明圏を成す唯一の国・日本」も古い言い回しだし、左翼批判も随所に出てくるけれども、これも勉強をしているリアリストなら周知の事実ばかりだ。加地伸行さんの「朝三暮四」のほうが切れ味がある。
 ただ納得をしたのは《日本には、仏教の伝来や武士が支配するようになった鎌倉幕府など、五回の国体の変化があった。しかし変化はしたが断絶はしなかったのである。》ということである。そうだ。日本の国体は、支那中国や朝鮮半島、ヨーロッパなどのようにそっくり入れ替わる可能性がなんどもあって、しかし辛うじてその転換をせずに皇室という文化伝統をつないできた。このことが日本人のアイデンティティの根幹を成していると言ってもいい。好む好まざるではないのだ。日本人のDNAの中に深く刷り込まれているのだからどうしようもない。

 参加者の中に「皇室のことなど普段から考えたことはない。まったく縁がない」と言った人がいた。え?でも伊勢神宮に行きますよね。伊勢神宮に行って二礼二拍手一礼しますよね。その人も行ってそうしているという。内宮御正殿には天照大御神が鎮まっておいでである。天照大御神から数えて6代目が神武天皇である。神武天皇から125代続く皇室は天照大御神からの系譜であり、伊勢神宮で額ずけば、それはすなわち皇室の祖霊に額ずくことであり、日本という国の文化伝統に感謝していることに他ならない。
 ちなみに熱田神宮の祭神は熱田大神であり、熱田大神とは草薙神剣そのもので、それを御霊代として天照大御神が憑らせられる。
 近所の小さなお社ですら、どこそこつながって最終的にはみんな日本の古の歴史につながっているのじゃ。めでたしめでたし。