バカの言い分

 見出しは、あくまでもワシャがバカで、そのバカの言い分ということね(笑)。

 ながらくブラック企業と呼ばれていたユニクロ柳井正会長がいろんなことを言っている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151125-00000013-fsi-bus_all
 その中からちょいと気になったところをピックアップしたい。
 出生率に関しての質問にこう答えている。
「メイドや家政婦として外国人の活用なども欠かせないのではないか。この観点からも外国人の受け入れは重要だろう」
 日本国内で、メイドや家政婦を使えるのは、高所得者層であろう。柳井氏やそのお身内ならメイドでも家政婦でも執事でも下僕でも雇えるだろうが、普通の庶民は、そんな使用人を雇うことなどとんでもない話である。さらに言えば、上流階級以外にメイドや家政婦を使う文化がない。なんとか金をやりくりして雇ったとしても、柳井会長のように「人を奴隷のように酷使する習慣」を日本人はもっていないのだ。そもそもそんな観点からの外国人の受け入れは無理。
 その話の延長で、シリア難民の対応についてはこう言っている。
「グローバルに生きていくという日本が、国際協力の中で難民問題に取り組まなくてはならないのは当たり前だ」
 この人、ホントに「グローバル」が好きで、お題目のようにこの言葉を繰り返す。「グローバル」を前提に置いて、以下のように続ける。
「観光客が来てくれるのは歓迎だが移民や難民は受け入れたくないというのは通用しないし、日本は受け入れないと国そのものが滅んでしまう」
 大雑把に言うと「シリア難民を受け入れないと日本は滅びる」と言っている。わけ、ねーじゃねえか。
 この人、難民支援がしたいんじゃない。国際平和をすすめたいのでもない。縮小傾向にある労働市場に、何人であろうと、ストックが欲しいだけなのだ。
 成功経営者としてのご託宣は垂れまくる。
「今後の企業経営の大きなトレンドは大きく2つある。『グローバル化』と『デジタル化』だ」
 この人、ホントに「グローバル」が好きでしょ(笑)。そしてついでに「デジタル」ときた。ところが違うんだよな。すでに「グローバル」は「ローカル」に置き換わり、「デジタル」よりも「アナログ」の大切さみたいなものが見直されつつある。
 柳井氏が大成功者であることは間違いない。しかし、柳井氏のような価値観を持ちたくないし、そのためにああいう顔になりたくないとも思う。ごまめの歯ぎしりですけどね(笑)。
「企業は積極的に外国人を雇用すべきか?」という問いに対して、こう応じている。
「違う文化、異なる習慣や考え方を受け入れ、理解する必要がある」
 それは仰るとおり。
「グローバルの観点で進めるには、外国人と一緒に仕事したり生活したりすることが必要だ」
 だからグローバルでなくてローカルでいいんだ。
「多くの日本の人はこういったことを経験してこなかった。それが不安につながり、新しいことへの拒絶感を生んでいる面もある。日本の課題解決には、多様性を重視することが求められる。女性の活用とともに、外国人の受け入れに向けてすぐにでも議論を始めることが必要だ」
 柳井氏のような大経営者にとっては、労働力がどこの国の人間だろうと関係ない。労働力は労働力で、経営のためには1円でも人件費を安くできれば企業の収益(つまりは自分の得)になるからね。そこに一片の人間性も認める必要はないのである。
 平成23年に、柳井氏が『柳井正の希望を持とう』(朝日新書)を上梓した。その中に「ユニクロの店長十戒」が書いてあるのだが、これが非人間的な訓戒で、「命を懸けろ」だの「全力を尽くせ」だの「異常なまでの熱意を持て」だの、資本家に都合のいい人間になるように強制する文言がずらずらと並ぶ。この「店長十戒」のおかげで2年後の平成25年には目出度く「ブラック企業」の黒冠を戴くことになる。その時、柳井氏の言い訳が朝日新聞に載った。ワシャはちゃんとそれを切り取って保管してある。柳井氏はこう言い抜けようとする。
「我々が安く人をこき使って、サービス残業ばかりやらしているイメージがあるが、それは誤解だ」
 そりゃ誤解じゃないでしょ。「店長十戒」を読んで実践するには、命を懸けて、全力を出して、異常なまでの熱意で働かなければいけない。残業手当が増えれば「命懸けでやっていない。全力を出していない。熱意がない」って言われて一巻の終り。
 そのことに多少の引け目があったのか、柳井氏はこう言い訳を始める。
「作業量は多いが、サービス残業をしないよう、労働時間を短くするように社員には言っている」
 だからさ、作業量が多いんでしょ。それが前提にある以上、労働時間を短くするように命令を出せば、サービス残業するしかない。すでに前提が間違っている。バカと絡むと面倒くさい……いやいやバカはワシャでしたね。まいいや、次に進もう。柳井氏はこう続ける。
「ただ問題がなかったわけではなかった」
 認めてるじゃん。
グローバル化に急いで対応しようとして、要求水準が高くなったことは確か」
 また「グローバル」(嘲)。柳井氏が突き付けた要求水準は高いなんていうレベルの「十戒」ではない。佐高信さんの言う「社畜」になれという「十戒」と言っていい。
 これに対して記者はこう問いただす。
「売り上げを増やせ、その一方で残業はするな、では生身の人間は壊れませんか」
 そのとおり、生身の人間は壊れる。しかし、労働力という数値に置き換えられる数字は壊れない、バカな経営者はみんなそう考えている。君臨する経営者はこう言った。
「生産性はもっと上げられる。頑張らないと」
 おそらくこの人の思考の中で、「労働力」と「奴隷」は同じ概念なんだろう。この人の発言を聞いていても、綿花畑で鞭を振るう白人のイメージしか湧いてこない。そんな人間の言う「金儲けのためには日本に外国人労働者をどんどん入れて国を超えて進め。でないと国が滅ぶ」を信じてはいけない。国家には、文化には、超えてはならない矩(のり)というものがある。そのことを経営者が理解できなければ、ユニクロは良好な企業風土というものを持つにいたらないだろう。やはり黒冠の企業ということになるか。

 ちなみに、与謝野馨氏は「外国人を労働者として受け入れることは」という質問に対しこう言っている。
「それはあろうが、外国人は日本人より生活慣習にこだわり、宗教心が強く、日本の社会にうまく吸収できないのではないか」
「(難民受け入れについても)日本は、世界で割り当てられるなら別であるが、ドイツみたいに積極的になる必要はない」
 そういう意見もある。