談合でトップを決めてはいけない

 昨年の9月12日、安倍という神輿が突然壊れた。自民党は急ぎ次の神輿をつくらなければいけない。この時期に「ポスト安倍」レースで先行していた麻生太郎幹事長をすんなり神輿にすればいいものを、森喜郎、青木幹雄古賀誠などがフィクサーを気取って料亭談合、その結果、福田神輿などという性の抜けたのを選んじまった。
 総裁選では、福田康夫330票、麻生太郎197票。麻生派以外の派閥の領袖がスクラムを組んだ割りには、大量の票が麻生に流れた。派閥の締めつけはその効果を失っているし、多くの若い議員が「福田では駄目だ」と気づいていた。
「政治家にすべては見えていない。特に細かいところはわからない。役人や専門家が法律をつくり道筋をつける。これがきちんと行われればいい」
 1年前に福田はこう言っている。こんなことを言っていたから霞が関官僚につけこまれ、骨までしゃぶられることになる。外交については、「相手が嫌がることをする必要がない」と言いきり、端から対外的な有効カードを捨てていた。「脱小泉、脱安倍」といいながら、対外的に腰し抜けの古賀や谷垣など機能不全に陥っている派閥のトップをずらりと並べて「古い自民体質」に戻しただけのことだ。
 安倍が辞めて、次に麻生という流れだったものを、空気の読めない爺どもがよってたかって福田さんにした結果、内政は何から何まで官僚任せ、外交は屁垂れ対応で舐められっぱなし、困ってしまってやっぱり麻生というのでは、国民は福田在任期間を棒に振ったということになる。
 そしてこの空白の1年で麻生も変わった。「月刊現代」の10月号に「麻生&公明党が仕掛ける福田内閣10月退陣!」という記事がある。この中で筆者はこう断言している。
福田首相退陣に向け動き出したという麻生自民党幹事長と公明党の太田代表》
《麻生が公明党に接近しているのは、重要な理由がある。自らの政権奪取に直結しているのだ。》
 秋の臨時国会をどうしても短く切り上げたい公明党と首相になりたい麻生との利害が一致した。だから、福田は引導を渡され引きずり下ろされたとも言える。
 昨日のニュースで流れていた公明党の太田代表のインタビューには笑った。福田退陣についてコメントを求められて答えていたのだが、その顔が今にも吹き出しそうで、笑いを噛み殺しながら苦しそうに受け答えしているのが面白かった。そして実は太田さん、2度ほど笑ってしまったのだ。どう考えても笑う場面ではないところで、「ニヤリ」と笑った。余程、楽しいことがあったに違いない。