待合室にて

 久しぶりに整形外科を訪れる。予約をしていなかったので長期戦を覚悟して臨んだ。鞄の中には何冊も本が入っているから大丈夫だもんね。一説によれば本の詰まった重い鞄を持っているので腰痛になっているとも言われているが、こればっかりはどうしようもない。
 鞄には、尾池和夫『活動期に入った地震列島』(岩波書店)、蔵研也『国家は、いらない』(洋泉社)、児玉光雄『イチロー式集中力』(インデックスコミュニケーションズ)、ヒルティ『幸福論』(岩波文庫)、「文藝春秋二月号」の5冊が入っている。
 早速、『活動期に入った地震列島』を読み出す。これはワシャの専門分野の本なので待合室と電気治療をやっている間の30分で読み終えた。付箋を貼った個所は5箇所、内容的にはあまり目新しい記事はなかった。
 でもね、面白いところもありましたぞ。それは阪神・淡路大震災についての記述である。
《神戸側でどの断層が動いたか、あるいは動いていないかという決め手が、地震直後になかなか出てこなかったのは、例えば新幹線のトンネルが活断層を横切っているのにもかかわらず、中をすぐに見せてもらえなかったからです。(中略)活断層の専門家を修復工事が終わるまで立入らせなかったJR西日本の方針は、わたしには理解できません。》
 死者107人を出した福知山線脱線事故の萌芽がこんなところに垣間見える。
 次に手に取ったのは『幸福論』だ。すでにワシャは名前を呼ばれて診察室の手前の丸椅子に座っている。
《あらゆる出来事に際して、わが身を省みて、これに対抗すべきどのような力を持っているかを吟味するがよい。美しい人を見れば、きみはこれに対抗する力として自制力を……》
 この個所を読んでいて幼稚園時代を思い出した。ワシャは桃組だったが、そのクラスにはかわい子ちゃんのグループがあって、ワシャはどうしてもその子たちと友達になりたくて、無理矢理ままごと遊びに入れてもらったものじゃ。彼女たちと楽しい時間を過ごしているワシャをからかったクソガキには鉄拳制裁をしておいた。う〜む、あのころからワシャは自制心がなかったのう。そのことを思いだし、「プッ」と吹き出してしまい、看護婦さんにジロリと睨まれたのだった。

 待合室での傍若無人な親子VSワルシャワの話もしようと思ったが字数が尽きた。その話は明日ということで今日のところは失礼いたしやす。