元日くらいは休めよ

 夏目漱石の作品に『永日小品』という作品群がある。その中に「元日」という日常生活を写した掌編があるので元日に読んでみた。大晦日に読む一葉の「大つごもり」も良かったが、元日に読む漱石の「元日」もなかなか宜しい。明治40年頃ののんびりした東京の正月がほのぼのと描かれている。
 それから100年後の元旦はなんだか落ち着きがない。昨日の新聞の折り込みに24店ものチラシが入っており、その内の14店が元日から営業をするそうだ。なにも1月1日から営業して従業員を苛めなくたってよさそうなものだが、儲け最優先ということなんだろう。SEIYUもAPITAもEIDENもイトーヨーカドーも軒並み新春セールをおっぴろげている。従業員だってお正月くらい家族でのんびりしたいだろうに、なんともまぁ気忙しいことですな。
 これは客の方にも責任がある。何も元日からわざわざ買い物に出なくてもいいのに、特売品や福袋のチラシに騙されてしまう。それにテレビはどのチャンネルもお笑い芸人があふれかえり自分たちだけで馬鹿笑いして悦に入っているから、馬鹿らしさのあまり外出しちゃうんでしょうかね。
 せめて元日くらいは炬燵を囲んで屠蘇でも飲みながら、百人一首をやってごらんなさいよ。すぐに眠くなるから。