怒る人

 昨日のイベントで素敵なオジさんがいた。
 地元選出の国会議員がイベントに顔を出した。それはそれでありがたいことで、「タケシのテレビタックル」などにも出演する有名人の登場に参加者たちも大喜びだ。イベント仕掛け人としては「シメシメ」だった。
 事件というか、アホな騒ぎはこの国会議員がらみで勃発した。一人の地元自治会の有力者が担当職員に怒鳴りはじめたのである。理由は「国会議員のヘルメットがない」と言う事だった。
「国会議員先生様のおヘルメットを準備していないとは何事だ!」
 とオジさんはがなる。
 主催者側は訓練参加者に服装を指定し、ヘルメットをかぶるように指示していた。しかし来賓の服装は自由である。一般参加の家族連れなどはタンクトップにビーチサンダルといった軽装だ。件の先生はスーツにネクタイ姿である。議員は訓練に参加するわけではないので、平服、ノーヘルで構わない。
 だが件のオジさんはお追従なのか、頭が固いのか、国会議員の頭にヘルメットをかぶせないことがどうにも許せないらしい。
 その後も何人かの担当者を捕まえては吠えたてて、終いには主催市の市長にまで噛みついた。
「国会議員先生のおヘルメットすら用意できないようなイベントなら止めてしまえ」
 そんな理由で止められるかよ。
 顔を真っ赤にしたオジさんは、どこへわがままを持っていっても相手にされないので頭から湯気を立てて会場から去って行った。お疲れ様でした。

 和田秀樹著『バカの人』(全日出版株式会社)の中に、「決めつけバカ」という章があり、こんなフレーズがある。
《決めつけバカのやっかいなところは、「自分が決めつけていること」に気づいていないことです。つまり、自分が人に迷惑をかけていても、煙たがられていても、本人はまるで気づいていないということです。》
 今のところ、このオジさんの苦情以外、ワシャの耳に届いていない。めでたしめでたし。