大阪へ

 晩秋の大和路をマイクロバスでひたすら大阪に向かってひた走った。真剣にひた走ったので、風景など愛でている暇がなかった。それでも盛りを越した紅葉が名阪自動車道を彩っていたのう。
 伊賀を越え、笠置山地を下り奈良盆地へとでる。そうすると正面右手に生駒山地、左手に金剛山地が行く手を遮るように立ちはだかってくる。
 この生駒山地の中に信貴という山があることを思い出した。右手にはいくつものピークがあるが適当なのを選んで、隣に座っているおじさんに「あれが信貴山ですぞ」と言うと、「へえぇ」と反応したのみであんまり興味はなさそうだった。
 信貴山信貴山ですぞ。中腹の毘沙門様には国宝「信貴山縁起絵巻」が所蔵されているのだ。見たことあるでしょう?ハリネズミのような格好の少年が自転車のリム転がしをやっている蒔絵を(実は身につけた無数の銀剣を風に鳴らして輪宝をまわしながら雲に乗る護法童子)。
 正式な名称は「延喜加持巻 虚空を疾走する剣の護法」という。巻物の左上から右下にかけて画面を切り裂くように護法童子が天空をものすごいスピードで疾駆している。左下には家並や野草を摘んでいる二人の女が小さく描かれている。この小ささが護法童子の高さを際立たせているね。
 というようなことを話しかけようとしたのだが相手にされなかったので、非常にサミシー!(財津一郎