山の動く(1)

 与謝野晶子が女性文芸誌「青鞜」の創刊に際して、詩『そぞろごと』を寄稿した。その中で「山の動く日来る・・・」と述べて創刊を激励している。それをパクって78年後に社会党土井たか子参院選での社会党大勝利を「山が動いた」と表現してたよね。(今は見る影もないけど・・・)

 ところが中越では本当に山が動いていたのだ。
 11月1日、2日と所用で新潟県中越地方をまわっていた。その際に運良く「旧山古志村」区域に入ることができた。もちろん現在旧山古志村の住民は全員避難指示が出されており、復旧工事関係者以外に人影はない。
 9.11総選挙の初登院の際に、防災服で登院した元山古志村村長の長島さんが書いた地震直後の手記がある。
《役場に歩き始めたのは、夜が白みはじめてからだった。想像を絶する悲しい現状が目に飛び込んできた。あるべき山がなかった。》
 日々見慣れていた山が目の前から消えていた。
実際に我々の乗ったマイクロバスの車窓に広がる惨状も同様だった。あちこちで不自然に山が崩壊している。緑の稜線を目で追っていると突然山が消えて、その裾に茶色の土砂が大量に堆積しているのである。ううむ、堆積などという生易しい代物ではない。茶色に変色した山が動いて村中を踏みにじったという印象だな・・・
 ここに入る前に長岡市内の様子もつぶさに見て来たのだが、震度6弱地震に襲われたわりには中心市街地ではほとんど被害がなかった。それを見ているだけに全村崩壊の光景は凄まじい。
(「山の動く(2)」に続く)