山の動く(2)

(上から読んでね)

 翌日、地震直後にボランティアで入った川口町を訪れた。その時の惨状を目の当たりにしていたので、現状はどうなんだろうと心配しながら越後川口の駅頭に立ったのだが、川口町は見事なまでに復興していた。街中、新築家屋で埋まっているのである。
 早い。この早さはどういうことだろう。疑問を役場に確認してみると担当者は言った。
「建物の解体費用を全額町がもったんですよ。国の基準や指導に従っていたらなんともならなかったでしょうね」
 実際に国や県の指導どおりにやっている長岡市ではいろいろな制約を受け、また支援の不均衡も露呈し被災地の再建はまだまだという印象なのである。それが川口町では(町長選が近いとはいえ)町長の大英断の御蔭で町は見事に甦っていた。
 またここだけの話だが、こういった大災害に際して、県という行政機関はまったく役に立たないということだった。市町村のように地に足がついていないということもあるのだろう。国と市町村の間に挟まってメッセンジャーボーイのような役にしか立たないそうだ。その上、そのメッセージすらまともに届けられなかったというのが実情らしい。
「救援物資にしても県を経由すると時間ばかり掛かって、その上、こちらが必要としているものが届かない。直接、支援してくれた県外自治体のレスポンスのほうが遥かに役に立った。」
「あまりに対応が悪いので、県知事に直接お願いしたら、遅滞していた事務がようやく改善した。」
 そういえば、川口町でも直接自衛隊が入って支援活動を行っているし、東京都狛江市からは常時数名の職員が役場前のテントに入って支援物資の受け入れ事務に奔走していた。それらの動きに比べると新潟県の印象は実に薄い。災害対策という一点に絞れば、県はいらない。むしろ邪魔だな。というのがワシャの偽らざる印象である。