台風23号報道 その1

 中日が地元紙ということもあって、19日から台風の記事を掲載しはじめる。
「『怖い』『もううんざり』台風接近 三重・宮川村の住民警戒」
 20日の朝、台風トカゲは鹿児島の東の海上を北東に進んでいた。午前7時52分、愛知県に暴風警報が発令される。この状況で朝刊は進路予想図とともに小さな記事を掲載した。
「けさ九州上陸も」(中日)、「超大型台風23号 きょう東海上陸も」(読売)、「今夜東海に最接近」(朝日)。
 その日の夕刊になると見出しは踊り出す。午前11時の段階で九州から関東似にかけて17府県で被害が出はじめていた。
「今夕、東海直撃も」「586世帯1411人に避難勧告」「強まる雨、募る不安」「鉄道や空の便乱れる」「9月コースで来襲」(中日)、「今夜、東海直撃の恐れ」「暴風域広く440キロに」「欠航や休校相次ぐ」(朝日)、「今夜 東海に最接近」(毎日)
 このなかでは中日新聞の「強まる雨、募る不安」が秀逸だ。東海地方では4時ごろから風雨が強くなり5時には暗くなりはじめ、不安な夜を迎えることになる。その心情にぴったりとはまった。「つよまる」「つのる」と韻を踏んだところも上手い。
 明けて21日、台風自体は日本の東海上に抜けており、西日本各地は残滓の雲間から台風一過の青空がのぞいていたが、新聞紙面の見出しはヒートアップする。
「19人死亡27人不明」「台風23号 本州を縦断」「高波で民家倒壊」「岐阜・八幡で300ミリ」「猛烈風雨列島にキバ」「川あふれ住民避難」「学生寮裏山崩れる」(中日)、「死者18 不明21人」「高波や土砂崩れ」「一瞬で民家7戸のむ」「交通寸断帰宅できず」「巨大波、家なぎ倒す」「壁崩れ体吹き飛ぶ」「青ざめる被災者」(読売)、「台風23号、22人死亡」「行方不明は25人に」「堤防崩れ住宅被害」「岐阜県災害派遣を要請」「37人乗りバス 冠水、音信絶つ」「猛烈風雨生活まひ」「堤防壊れ、住宅に波」「長良川右岸水あふれる」(朝日)、「死者18人、不明20人」「『直撃』もううんざり」(毎日)
 中日の「猛烈風雨列島にキバ」と、朝日の「猛烈風雨生活まひ」の「猛烈風雨」が印象的だ。中日はこの見出しの下に濁流の水路の写真をもってきている。これに対して朝日は倒木に押しつぶされた乗用車の写真だ。これは写真が逆だった。「キバ」の中日に「倒木&ぺちゃんこ車」だったら金星だった。
(「台風23号報道 その2」に続く)