西域の悲劇

《それは、ユーラシア大陸を東西にむすぶ幅のひろい――そして長く、ときに放恣に砂漠によってと切れ、さらにつながってのびてゆく――乾燥地帯の緑の帯びである。》
 以上は、「民族の十字路」と題された『シルクロード 第六巻』(日本放送出版協会)の冒頭に記された司馬遼太郎の文章である。司馬さんはこの他にも『西域をゆく』(文藝春秋)、『対談中国を考える』(文藝春秋)、『歴史の舞台』(中央公論)などで新疆ウイグル自治区について触れている。もともと夜郎自大な中央の権力よりも、辺境の民族を愛してきた人だから、自然と記述が多くなっているのだろう。

 ゴビ砂漠の西、あの万里の長城すら尽きたそのまた先に西域はある。ロプノール、カラシャール、カシュガル、タシュクルガンなどの地名をみたって、漢民族の土地でないことは明らかだ。
 しかし、ウイグルの首都ウルムチは漢族にほぼ制圧された。この写真をご覧ください。
http://www.jiji.com/jc/v2?id=20090706uighur_riot_03
 漢族のヤクザみたいな連中が武装してウイグル人を襲っている。もちろん治安部隊も漢族を守るために大動員されているわけで、ヤクザも治安部隊も軍も、みんなウイグル人の敵だ。昨日の読売新聞1面には武装警官の大部隊が整列する写真が載っている。それを見て1933年のニュールンベルクの大会を思い出しぞっとしましたぞ。
 中国の開き直りもここまできた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090709-00000025-jij-int
 ノーベル平和賞にノミネートされた経歴を持つラビア・カーディルさんを暴動の黒幕だと批判を始めた。
 裏でこんなスパイ活動
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/270410/
をしている国が何を言っていやあがる。
 こんな状況では、ウイグル人ウルムチを脱出する以外に生き延びる術はあるまい。

シルクロード 第六巻』にはたくさんのウイグル人の写真が掲載されている。みんないい笑顔を司馬さんのカメラに向かって見せている。この人たちは無事にウルムチを脱出できたのだろうか。