個室ビデオ店放火事件の背後にあるもの

 15人の貴い命を奪った小川和弘が「罪を償いたい」と弁護士に言っているそうだが、つくづく甘い男だ。だからギャンブル依存症にはまってしまうのである。この男のしたことは償って償いきれるものではない。
 こいつ、取り返しのつかないことを仕出かしてしまったという意識が希薄なんだろうね。こんなことも口にしている。
「(自分の子どもの)人生をダメにしてしまったんじゃないか」
 やっぱり自己中心的な大バカ野郎だった。小川は「罪を償いたい」とか殊勝なことを言いながら、心配しているのは自分の身内のことである。何人の方が大切な父親を、夫を、息子を失ったと思っているんだ。てめえの子どもの心配をしている場合か!
 この事件の関連で気になることがある。新聞では「パチンコなどのギャンブルで借金をつくり、生活に困窮し人生が嫌になった」というふうに書いてあるのだが、テレビのニュースでは「パチンコ」の「パ」の字も出てこない。「ギャンブルで借金をつくり……」という表現になる。やっぱりCMをもらっている業界のイメージダウンにつながるようなことは言えないか(嘲)。

 現在のパチンコ市場はざっと30兆円ある。参加人員は年間延べで1,800万人程度だ。10年前は2,800万人(『パチンコ産業経営白書』に依る)だったから1,000万人も減少している。でも、玉の売上はそれほど落ちていないので、業界としては頑張っているのだろう。この数値にホール数(約7000店)、玉の単価(1玉4円)、打球の速度(1発/0.6秒)などを考慮して計算してみると、1ホールにつき、200人の人間が24時間、365日飲まず食わずでずっとパチンコをやり続けると30兆円になる。
 恐ろしい数字だ。200人×7000店=140万人が仕事もせずにひたすら射幸心を満足させるためだけに日夜パチンコ台に向かっているということになる。これには睡眠時間とか、出玉のことは考慮していないから、140万という数字は更に大きくなるだろう。これだけの労働時間が失われているというのは、国家的損失と言っていい。
 溝口敦『パチンコ「30兆円の闇」』(小学館)にこうある。
《心ならずも自由になる時間がある。パチンコをする。ハマる。カネが儲かるかもと期待だけさせて、結局はむしり取り、借金まで負わせる。挙げ句の果てにはクスリに走ったり自殺したり……》
 挙げ句の果てには、個室ビデオ店に放火したり……