徳川実紀 その1

 最近、業務多忙につきまとまった読書ができない。だから『近世事件史年表』(雄山閣)などを眺めて寸暇を惜しんでいる。そうしたら面白い記事に出くわした。天明7年(1789)のことである。
《番頭(ばんがしら/将軍の親衛隊の部隊長)水上美濃守、先輩で同役大久保玄蕃頭ら七人を招き芸者を呼んで宴会あり。大久保ら膳碗を割り大小便するなど乱暴の限りを尽くした。(実紀一一)》とあったので、そのエピソードが気になって『徳川実紀』を引っ張り出して調べていたのじゃ。調べていて、はったと気がついた。ワシャの『徳川実紀』はきれいなのだ。汚れていないのである。

 小説家の鈴木輝一郎さん
 http://www3.famille.ne.jp/~kiichiro/
の11月28日の日記にこう書かれている。
徳川実紀がバラで入手できるのが判明したのがラッキー。普通の古書店だと全巻揃いでないと売ってくれないんですが、ぼくが使う巻はだいたい決まっているもんで。吉川弘文館の専門書は製本が堅牢だとはいっても、さすがに使いすぎで、そろそろやばい。》
 つまり鈴木さんは、ボロボロになるまで資料を使いきっているということですな。う〜む、さすがだ。
 ワシャは『徳川実紀』を索引まで含めて全巻持っているんですが、全巻すべてが新品同様なのであ〜る。ということは、ワシャは鈴木さんに比べれば、まったく『徳川実紀』を使いこなしていない、宝の持ち腐れ状態ということなんですな。これでは本もかわいそうというものである。まぁそれでもワシャがくたばれば、またこの資料たちは古書市場に流れ出て、どこかの小説家の手元に辿り着き、思う存分にこき使われ本の本懐を遂げられるだろう。それまではワシャの本棚で休憩していると思ってちょうだい!
 もう一点、前述の鈴木さんの文章から読み取れるのは、鈴木さんが焦点を絞って資料収集をしているということである。歴史好きというだけのワシャなど、意味もなく資料収集をしているので、なにがなんだかわからなくなってしまっているのだった。
(下に続きます)