池波正太郎忌

 先週、名古屋へ仕事で出かけた。仕事を終えて地下鉄に乗った時にはすでに午後6時を回っていた。運良く席が空いていたので腰をおろし、いつものようにおもむろに文庫本でも取り出して・・・と、カバンを探ったのだが「ない!」本が入っていないのだ。バカバカバカ、ワシャのバカ、読む本がない。仕方がないので上前津で途中下車して本を仕入れていくことにする。
 上前津の古本屋をうろついて100円均一コーナーなどを物色し数冊を購入したのだが、その中に「戦国と幕末」という本があった。池波正太郎のエッセイ集だった。それを帰りの電車(JR)の中で読んでいてふと思い出したことがある。
 池波が小説を書き始める前に芝居の脚本や演出をしていたというのは、結構、有名な話なのだが、そのころに御園座で上演する芝居の稽古をつけるため名古屋に逗留していた。その稽古帰り、暇つぶしに近くの古本屋に立ち寄ったのだが、そこで「江戸切絵図一揃」を見つけてしまい、「これが芝居一本分の脚本料よりも高価なものだったが衝動的に買ってしまった」のだそうだ。その後、池波は江戸を舞台として「剣客商売」、「鬼平犯科帳」、「仕掛人藤枝梅安」などを量産していくわけだが、この時に買った絵図がたいへん役に立ったと、どこかに書いていたのを思い出した。
 そうそう、フジテレビの時代劇「剣客商売」が好きで毎週楽しみにしていた。(楽しみにしていただけで、午後8時放映ではなかなか見られなかったけどね・・・)
 とくに小兵衛(藤田まこと)の息子大治郎と田沼意次の娘三冬を渡部篤郎大路恵美が演じていた第1シリーズから第3シリーズが面白かった。とくに奥ゆかしい三冬さん(多分、大路の性格がそのまま出ていたのだと思うが)がよかった。寺島しのぶに代わってからは、どうも親譲りの歌舞伎顔が全面に出過ぎて興ざめですな。

 ああっ!そんなことを考えていたら降りる駅を乗り越してしまった・・・しまった。

 お後がよろしいようで。