本物の芸

 昨日、「笑点」を久々に見た。1965回を数えるだけのことはあって相変わらず面白かった。
 それにしても第1回目からずっとレギュラーの円楽、歌丸、こん平(休演中)ともに老けたよね。笑点が始まったころの写真を見ると、円楽さん(35歳)の表情もまだまだ生々しくて野心でギラギラしているし、歌丸さん(32歳)の髪の毛も黒くふさふさとしている。こん平さん(25歳)はまだ童顔である。そりゃぁ立川談志が司会者をやっていた1968年頃の写真だからしかたがないけど、あの頃の若手落語家たちもみんな大師匠になってきたわけだ。

 さて初代笑点司会者の立川談志のことである。現役落語家の中で彼ほど波乱万丈の人生を歩んできた男もいないだろう。ざっと振りかえっても、27歳で真打ちに昇進し、29歳で「現代落語論」を執筆し、32歳で笑点の司会者をやり、35歳で参議院議員、39歳で沖縄開発庁政務次官、43歳で国会議員を辞職し、47歳で落語協会と大喧嘩をして「落語立川流」を創設し家元となる(弟子にビートたけし高田文夫らがいる)。その後、食道がんの手術を2度受け糖尿病も患うが、相変わらず元気だ。
 談志がその著書の中でこんなことを嘆いている。(以下、要約)
「今の客はだらしねぇ。日本の芸能というものは厳しいところから育ってきたはずで、観客は芸人が出てくると一応は疑ってかかる。少しぐらい面白くっても『金を取ってんじゃねえか。当たり前だぜ』と冷たくあしらったものだ。ところが今は、ヒヨッ子たちに黄色い声援が飛び、面白くも何ともない新劇に拍手をする。学芸会のような『ミュージカル』と称するものに、金を投じて大人しくこれを鑑賞しているバカバカしさ」
 これは1966年の談志の文章なのだが、この状況には益々拍車がかかっている。今のテレビをご覧なさいよ。番組の質も芸人の質も三流高校の文化祭にも劣るようなモノになってきている。
 そろそろ観客である我々が気づく時期になってきたのではないか、と思っている。くだらない吉本芸人の番組は切って、歌舞伎や落語を鑑賞に行こうよ。そうそう近場では大須演芸場があるじゃないか。そこで精進をしている芸人を見るのもいいやね。
 そんなことを笑点を見ていて思った。