ドック連チャン

 昨日、人間ドックに行ってきた。隣町の総合病院で午前9時の受け付けだった。いつもより遅い受付時間だったので、前が混むのではないかと思っていたが、そんなことはなくその後の検査はスムーズに進んだ。身長は変わらず。体重は「かなり太りましたね」と言われた。そりゃそうだ。前回の検査から5キロ以上増えている。それでも標準体重なんだけどね。底の時には肥満度が−8.8%しかなかったから、当時は大変なストレスだったんだな。人間関係がこれほど人の体重を激減させるとは思わなかった。いい経験をしたわい。
 それでもね、体重が減って、それまで悪かった数値がほぼ完治したのも事実だ。体重が減ると頸椎にかかる重さも少なくなるから、持病の腰痛がまったく出なかった。しかし、体重が戻るにつれて、腰痛も戻ってくるからかなわない。
 血圧は正常範囲内。矯正視力も両目とも1.5、ただし検査はゲーム感覚で、見えていないのだけれど、勘をはって「右」「上」「下」「左」などとやっているから、どこまで正確なのかは分からない。
 採血は「気分が悪くなったことはありませんか?」と訊かれたので「ありません」とはっきり答えた。でも、ワシャは注射が大嫌いなので、横を向いて緊張していると「肩の力を抜いてください」と言われてしまった。「はひ」と答えて……「はい」ではないんですな、途中から空気が抜けるから「はひ〜」になってしまう。
「腕の力も抜いてください」
「はひはひはひ」
「ちくっとしますよ」
「はひ〜」
 チク。
「はひはひはひ〜」
「1本目採れました」
「はひ〜」
 くどいですね。こんな感じで、いい大人がちびっているものだから、採血をする看護婦さんも、笑い出してしまいました。
 その次が「腹部超音波」。ワシャの担当は40前後のすらりとした男性だった。ここ何年かは男ばかりなので、おそらく男は男が、女は女が担当するようになったのだろう。ワシャ的には看護婦さんがいいんだけど、それはけっして女好きということではなく、女性の方がケアされているという気持ちになるんですね、だから緊張するけれど、女性のほうがいい。でも、男性。
「大きく息を吸ってください」
「止めてください」
「楽にしてください」
「左を向いてください」
「右を向いてください」
「元に戻ってください」
 なんとなく、言い方が女性っぽいんですね。先生が女性だったので、そういう言い方が染ってしまったのかも。背の高いどちらかというと男っぽい検査員だったけれど、女性のような言い方だったので、この人、カマッケがあるのかいな、と思ってしまった。最後に、腹や胸に塗られたゼリーをタオルで拭くのだけれど、なんとなくこっ恥ずかしいというか……。
 その後、胃の検査。ワシャはバリウムがまったく気にならない性質なので、というか喉が渇いているので、はやく飲みたいくらいで、あっという間に飲みほして、検査台の上で転げまわって、終了。
 内科検診では、オタクっぽい若い医者にあたった。すでにワシャの問診表は読んでいるようで、先回りして、ワシャの既往症や現在気になっているところを縷々羅列する。その言い方には「みんな知っていますから、あなたは何も言わないでいい」という断固たる彼の意志が垣間見えていた。胸と背に聴診器を当てて、腹に手を当てて、それでおしまい。事務的といえばこれほど事務的な作業はなく、言葉遣いは丁寧だが、眼の前にいる人間を、単に対象物としてしか見ていない感じだったなぁ。受検者と会話をしようという気持ちはまったくない、こんなのが名医になっていくのだろうか。

 昼をはさんで、午後から脳ドックを受けた。午前中は受検者でごった返していた検査病棟も、午後は閑散としているんですね。そこで頭部のMRI検査を受けた。これがワシャにはけっこうきつくて、頭を完全固定するのだが、これが耐えられない。まな板に頭を留められた鰻みたいな気分になっちまう。これで20分、ワシャは「禅」を思い出して、手のひらを「法界定印」(ほっかいじょういん)に組み、深呼吸を始めるのだった。そうするとね、落ち着いた気持ちになり……なるかい!頭の周りではMRIの機械が「カンカン、ドンドン、ヒュルヒュルヒュル、ギーギー、カツカツ、ゴンゴンゴン……」と大騒ぎなのだ。ワシャはのた打ち回って2時間を耐えたのだった。
 あ〜おもしろかった。